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「水は借り物」 せっけんから始まる物語

大学や研究機関などが持つ技術やノウハウを民間団体が活用し、新しい価値を生み出す産学連携プロジェクト。生活クラブ連合会は日本大学芸術学部と連携し、学生ならではの視点でせっけんの魅力を発信するプロジェクトを進めてきた。せっけんを入り口に川から海へ、食や暮らしへと「水をめぐる旅」を経て、学生たちはどんな価値を発見したのだろうか。

芸術学部の感性と手法で

2023年11月30日に行われた成果発表にて。学生による約1時間のプレゼンテーションの後に、制作した冊子などの配布が行われた

せっけんの使用を入り口にして生活クラブが提携生産者とともに続けてきた環境活動を、まだ使っていない幅広い層の人々に向けて発信する新しい切り口の広報ツールをつくる。このミッションのもと、昨年7月から、生活クラブ連合会は日本大学芸術学部(以下、日芸)との産学連携プロジェクトを進めてきた。

せっけんの共同購入を広げていくことは、持続可能な未来の実現をめざす「生活クラブ2030行動宣言」の重要目標の一つ。提携するヱスケー石鹸(せっけん)(東京都)と話し合いを重ね、包材に使用するプラスチックを20%削減し、パーム油の一部をリサイクル原料に切り替えた。行動宣言を具現化した消費材の第一号だ。

けれど、こうした進化にもかかわらず利用は伸び悩んでいる。生活クラブはこれまでになかった語り口や手法でせっけんの使用価値を発信でき、日芸の学生は社会課題の解決とデザインの組み合わせを実践として学ぶことができる。お互いのニーズが合致した。

文芸学科を中心とする13人の学生がプロジェクトに参加した。生活クラブやせっけん、プロジェクトの目的についてレクチャーを受け、取材や調査活動が始まった。ヱスケー石鹸の工場見学(埼玉県)にとどまらず、せっけんの使用による環境活動に積極的に取り組む提携生産者、JA庄内みどり遊佐町共同開発米部会(山形県 以下、開発米部会)と重茂漁業協同組合(岩手県 以下、重茂漁協)を訪ね、地域の人々や風景に出会った。

「せっけんと合成洗剤との違いを理解するだけでも一苦労でした」と、プロジェクトの実働指揮を担った文芸学科専任講師の小神野(おがみの)真弘さんは打ち明ける。自分で洗濯することは少なく、家にどんな洗剤があるかもわからない学生が一般的だ。環境問題についての知識はあっても、それが自分自身の生活にどうつながっているのか、実感する機会は少ない。「現地に行きインタビューをする中で、学生たちは水が循環していると体感しました」と小神野さん。仕事に向き合う「大人の真剣」に出会えたことも大きな成果だったと話す。

水をめぐる旅

約6カ月にわたる取材の足跡は、動画や「水をめぐる旅」と題した冊子にまとめられた。

湧水が生活用水として町内を流れる遊佐町。学生たちは暮らしに密接した川の存在に驚いたという。開発米部会の池田恒紀(こうき)さんは、「上流の水を汚せば、下流の水も汚れてしまう。田んぼで使う水も同じ。できるだけ農薬を減らし有機肥料を試していきたい」と話し、鳥海山のふもとで出会った町民は、「山に降った雨は20年かけて染みだしてくる。今使った水が20年後の子どもたちに届く」と語った。ほ場の見学後に「遊YOU米」を食べ、「水が自分たちにつながっていると初めて実感した」と言う学生もいた。

「肉厚わかめ」の生産地、宮古市重茂地区では、収穫したわかめの茎取りから梱包(こんぽう)までの作業を体験した。アワビを種から育て海に放流する事業を行う同地区は、1970年代に漁獲量が減少、地域全体でせっけんを使うようになった。その後漁獲量は回復したという。海で成長したアワビは必ずしも自分たちで収穫できるわけではない。定置加工販売課長の齊藤義治さんは、「水産資源も海も、自然の恵みはみんなで共有するもの。恩恵にあずかるだけでなく、次世代につなげられるよう返していく」と語った。重茂漁協の理念だ。

遊佐町の人々の生活を今も支える湧水を取材。清冽(せいれつ)さに感嘆の声をあげる
 
重茂漁協で肉厚わかめの茎取り作業をする学生たち

読解力から共感、行動へ

昨年11月末、生活クラブ連合会の会議室でプロジェクトの成果発表会が行われ、オンラインを含め100人以上の組合員と生産者が参加した。ショートムービーが始まり、調理や手洗いに使われる水がスクリーンに映し出される。「蛇口から流れ出る水は、誰のものだろう」。演劇学科の学生のナレーションが静かに問いかける。

暮らしの中で使われ、海にたどり着いて空に昇り、また陸へ。水はめぐり続ける。今使った水は、次の誰かが使う水だ。「借りて使っているってことだよね」「図書館で借りた本を粗末に扱わないのと同じ」「水を大切に使う方法はさまざまあるけれど、その一つがせっけんだね」。組合員が語ってきたせっけんの物語が、学生たちの言葉で再構成されていく。

「水は借り物」。水を大切に使おうというメッセージを込めた言葉が、この動画を締めくくる。
10代前半からSDGsを学んできた学生たちは、環境問題について適切に理解し、表現する力がある。せっけんの使用価値を科学的に裏付けたいという気持ちも強い。生活クラブ連合会情報企画部長の山本江理さんは、「理解や表現だけでなく、今回、そこに共感を加えられたのは大きかった」と話す。冊子、動画、ポスターの発表を聞き、多くの組合員や生産者が、若者からエールを送られたような気持ちだと感想を述べた。「組合員が意欲をかき立てられたことが何よりの成果ではないか」と山本さん。このツールを活用し、各地の生活クラブでさまざまな活動が展開されることを期待している。
▼完成した動画『水は「借り物」』はこちらから▼
 
文/本紙・元木知子
★『生活と自治』2024年4月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2024年4月30日掲載】
 

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