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もはや「旧聞」と澄ましているわけにはいきません。 だれもが悩み、不安も抱える子育てをドヤ顔で「指導」ですか?

【連載コラム】何気ない日々の向こうに――第10回 朝日新聞編集委員 高橋純子さん


推定4人の読者の皆様こんにちは。先月発足した、第2次岸田再改造内閣の顔ぶれをご覧になりましたか? ひな壇にずらり並んだ26人の副大臣と28人の政務官、計54人が全員男性の絵面はなんとも壮観でしたね。壮観すぎてあたしゃ泣けてきましたよ。これが2023年の光景とは信じられません。信じたくありません。

推定4人の読者のみなさま、こんにちは。すでに旧聞に属してしまった感がありますが、私は今年10月、自民党埼玉県議団が条例化しようとした、いわゆる「留守番禁止」条例に怒り、埼玉県民でもないのに震えていました。いい加減にしてくださいたま。勘弁してくださいたま。

あのお母さんも、あのお父さんも、みんなそれぞれのやり方で必死に子どもを育てている。政治や行政の仕事は、その「それぞれ」をサポートすることで、「それぞれ」の事情をなんら顧みることなく、一気にガサッと「禁止」の網をかけて言うことを聞かせようという発想は、「しつけ」と称して子どもの人権を踏みにじる虐待親の発想と同一線上にあるのではないか――などと思考をめぐらせていると、自然と、自分の子育てを振り返ってしまう。フルタイムで働きながらだったので、子どもにずいぶん無理をさせたなあと、少し胸が痛む。

妊娠がわかってすぐに都内某区へ引っ越したのは、22時まで預かってくれる区立保育園があると知ったから。同じことを考える人は当然たくさんいるから競争は激しく、「落選」を重ね、私が1年間の産休・育休(朝日新聞政治部では初の産休・育休取得者でした)、さらに夫が半年間の育休を取って(会社では初の男性育休取得者でした)のちやっと入園を果たした。

通常保育は18時半まで。お迎えが19時半ならビスケットなどのおやつを、20時半以降になるとちゃんとした夕飯を食べさせてくれる。もちろん延長保育料はかかるけれど、ベビーシッターを頼むことになぜか抵抗を感じてしまう私にとってはベストの環境。よしっ。というわけで、お迎えは基本20時半に設定し、日々の生活を組み立てた。

それでも最初は大変だった。やれ発熱だ、やれ発疹だと保育園からしょっちゅう電話がかかってくれば、仕事の途中でも迎えに行かねばならない。①北関東に住む夫の両親に新幹線に飛び乗ってもらう②私または夫は園に駆けつけて子どもを引き取り、病院に連れて行く③自宅で合流した両親に子どもを預けてまた仕事に戻る、なんていうこともたびたび。よくやった。あんなことはもう二度と出来ないと心から思う。
 

 

 
延長保育をお願いしている人はごくごく少数で、お迎えはいつも、うちが最後か最後から2番目。同僚や取材先に「20時半、時には22時まで預けている」「夕飯はほぼ作っていない」と言うと、決まって「すごいねえ」と返ってくる。でも、その顔に「子どもがかわいそう」と書かれているのを見てとって、いちいち傷ついた。被害妄想気味だったことは否定しないが、そればかりでもなかったはずだ。

子どもがかわいそう? どうして人は、他人の子どもの幸せ/不幸せを勝手にジャッジしたがるのだろう。私とて、子どもに申し訳ないという気持ちはもちろん抱いていた。されど私は仕事が好きだ。だけど子どもを産んだら100パーセントは働け「2軍」扱いされている。もうこれ以上、後ろに下がりたくない。下がったら、自分が自分でなくなってしまうと思うんだよ――。

何度も自問自答して出した「子育て方針」のはずなのに、子どもを両手でかばうようにして育てている優しいママたちを見ると落ち込んでしまう。習い事をさせたり、高い英語教材を買いそろえたりしている話を聞くと、あせってしまう。子育てには「正解」がないはずなのに、自分だけは「不正解」を出し続け、子どもに「負債」を負わせているような気がして、言いようのない不安に襲われた。小学校に入ってからは、提出物をよく忘れるとか、落ち着きがないとか、虫歯があるとか指摘されるたび、「親の育て方がなってない」と言われているような心持ちになって肩身が狭かった。

あ、でもいま思い出した。小学3年の時の女性担任には救われたな。子どもが先生の気を引きたくて、「今日の晩ごはんはひとりでカップラーメン食べるんだー」とちょっと「盛って」話したら、「いいねー!卵入れたら栄養あるよ。先生はそうやってよく食べてたよー」と明るく返してくれたという。そううれしそうに報告してくる子どもの顔を見て、先生が「かわいそう」と言わないでくれたことに感謝した。なんら手を差し伸べてくれるわけでもない、単なる感想としての「かわいそう」は、子どもの自尊感情を傷つけるから。後日お礼を言ったら、先生は「私も母子家庭で育ったので、わかります」と笑った。


 

 
テレビのニュースで、「留守番も虐待なのか?」と記者に問われた自民党埼玉県議団長が「当然です」とドヤ顔を決めていた。オソロシイ。そのドヤ顔が、綱渡りで子育てしている誰かの心をへし折っているかもしれないことに本当に思いが至らないのならば、政治家には向いていない。条例撤回に追い込まれてもなお、「内容に瑕疵(かし)はなかった」と言い張っている団長。埼玉県民のみなさん、今後もしっかり監視してくださいたま。

ちなみに我が子は来春大学を卒業する(はず)。思春期を過ぎたころからちょくちょく、「ネグレクト(育児放棄)されたもんねー」なんて言ってくるようになった。冗談めかしてはいるが、子どもにしてみれば、いくばくかの真実を含んだ「告発」なのだろう。「ごめん。でも、一生懸命育てたことは間違いない」。私はそう言い続けるしかない。

(※冒頭の「推定4人の読者の皆様」は、敬愛するエッセイスト、故・高山真さんへのオマージュです)

撮影 魚本勝之

たかはし・じゅんこ
1971年福岡県生まれ。1993年に朝日新聞入社。鹿児島支局、西部本社社会部、月刊「論座」編集部(休刊)、オピニオン編集部、論説委員、政治部次長を経て編集委員。
 

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