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未来につなげる牛乳の価値。生活クラブのミルクビジョン


 
コロナ禍からの牛乳の利用低迷、飼料価格や燃料費の高騰などで日本の酪農家の経営状況が悪化している。生活クラブ連合会は提携生産者とどうこの危機を乗り越えていくのか。生活クラブ連合会専務理事の岡田一弘さんに聞いた。

酪農応援緊急カンパ

2022年10月、生活クラブ連合会は、提携する酪農の生産者団体である、那須箒根(ほうきね)酪農業協同組合、農事組合法人新生酪農クラブ、南信酪農業協同組合からの支援要請を受けた。生乳の生産コストは上がっているが、乳価はそれに見合う値上げになっておらず、酪農が継続の危機に陥っているためだ。

これを受けて生活クラブ連合会は、23年2月から3月にかけて組合員に向けて「酪農応援緊急カンパ」の呼びかけを行った。全国の組合員から集められたカンパ金の総額は5,348万1,000円。生産者団体に送られ、生産者ごとに前年度の生活クラブへの出荷乳量に応じて案分された。
「飼料価格高騰に加え、生活クラブでの牛乳の利用が毎年減っていました。21年には提携酪農家は60人いましたが、22年に5人が廃業し、早急に対応しなければいけませんでした」と生活クラブ連合会専務理事の岡田一弘さんは言う。

生活クラブの提携生産者が使用する飼料は、遺伝子組み換えではないトウモロコシ、大豆かすからなる。そのため飼料価格は割高であるが、さらにコロナ禍、ウクライナ危機、円安など生産コストを押し上げる状況が続いている。廃業した酪農家のうち、子牛の育成に転業した一人を除くと、後継ぎがいないということが主な廃業の理由だ。酪農に将来の希望が持てない現状が見える。

「酪農は、飼料の配合から、牛の排せつ物を区分し堆肥にするなど、大変な作業です。搾乳ロボットは数千万円するので、皆が導入できるわけではないですし、搾乳する前後の衛生面や体調管理の見回りなど、気力も体力も必要です」と岡田さんは言う。
緊急カンパだけではなく、継続した支援が必要と、4月から「2円で応援!未来を明るくミルクビジョン」として牛乳の価格に2円を加えて「牛乳応援基金」とすることも決定した。3か月ごとにたまった金額を基金運営委員会が確認し随時生産者に渡していく。岡田さんは「お金だけの問題ではなく、支援を通じて消費者と生産者がつながったことでどうにかやっていけるという言葉を生産者からもらいました」と話す。

生活クラブと牛乳

生活クラブは1965年に牛乳をグループで購入することから始まり、生協に発展した。79年に提携する酪農家と共同出資して牛乳工場(新生酪農株式会社)を建設し、以来、生産から流通まで明らかな牛乳を共同購入している。

牛乳を流通させるには、搾った生乳を加熱して殺菌する必要がある。生活クラブではその殺菌方法を、120度2秒間の超高温殺菌ではなく、栄養成分を損なわないパスチャライズド製法という72度15秒間での殺菌方法にしている。この製法の場合、新鮮で清潔な生乳が必要なため、生乳の「生菌数」を1ミリリットル当たり1万個以下にするという生活クラブ独自の目標基準を定めている。法律で制定されている受入基準は直接顕微鏡で数える「総菌数」(400万個以下/ml)だけなので、酪農家は通常よりも厳しい衛生管理が必要になる。搾乳のたびに牛の乳房を拭くが、そのタオルを組合員が寄付する活動も行ってきた。

牛乳の共同購入を通じて、毎日食べているものがどのように作られているのか明らかにし、わかったものを生産者とともに作り、利用していくという生活クラブの基本的な姿勢が作られてきた。

しかし、現在では家族構成の変化などから牛乳の利用は減り続けている。牛乳ではなく乳酸飲料などの乳飲料を日常的に飲む人も増え、嗜好(しこう)の変化も大きい。
生活クラブでは、23年度、酪農家の経営が安定するラインとして1年間で1,200万本の利用を目標にかかげている。コロナ禍で自粛されていた生産者交流会などの組合員活動も活発になり、3月から牛乳の利用促進キャンペーンを始めた地域では前年度の本数を上回るところも出てきている。

生産を続けていくには

生活クラブ連合会では23年4月に農林水産大臣に「食料安全保障を進めるための酪農家への支援に向けた政策提案」を提出した。

「本来なら日本の食料安全保障の問題なので、生産費が販売費を上回った際の差額ぐらいはせめて補償するような制度が必要だと思います」と岡田さんは言う。今は生乳が余っているが、15年頃からは国内で生乳が不足して、全国酪農業協同組合連合会(全酪連)では余った生乳で作ることを前提にしたチーズの生産が難しくなり、工場の閉鎖につながった。生活クラブの消費材「シュレッドチーズ」の原料の一部となるゴーダチーズは、全酪連に製造を委託してきたが、工場の閉鎖に伴い、新生酪農がチーズ事業を引き継いだ。
21年には栃木工場内にチーズ工場を建設し、現在は、生活クラブの消費材に加え全酪連のチーズ製造も担う。

「これから需要の増えるチーズを、提携する栃木の酪農家の生乳を使って安定的に製造できる仕組みを作りたいと、全酪連の協力のもと新生酪農が引き受けて工場を建設しました。提携する酪農家の生乳を使った工程の明らかなチーズは今後も必要だと思います。24年の2月頃にはオリジナルのモッツァレラチーズの供給も予定しています」(岡田さん)
生活クラブの消費材は、22年度に牛乳以外にも多くの価格改定が行われた。改定するときには生産者から飼料代や電気代など価格の根拠となるものをすべて積み上げて開示してもらう。岡田さんは「生産者の生産原価を守るとしても、組合員の経済状況もあります。未来の子どもたちにどうすれば消費材を残していけるか考えていかなくてはいけません」と話す。

新生酪農では、学校給食での牛乳の利用が徐々に拡大している。使い捨ての紙パックの容器ではなく、リユースできるびんを利用したいこと、子どもへの食育にもなるということで自治体からの要請がある。「酪農は排せつ物を堆肥とし、それを使った畑で野菜や畜産飼料を作り、また循環する地域の中の大切な風景であり資源です。遠回りでもパスチャライズド牛乳を子どもたちが飲むということで、社会に対して牛乳の持っている価値を当たり前にしていけるのではないでしょうか」と岡田さんは期待する。

パスチャライズド牛乳は新鮮な生乳がなければ作れない。都市近郊の酪農を持続させていくことで、子どもたちに牛乳から生まれるさまざまな価値をつないでいくことができる。
(撮影/高田千鶴)
★『生活と自治』2023年9月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年9月30日掲載】
 

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