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続く、野菜生産者の挑戦【予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット 他】


 
生活クラブ連合会は、米、牛乳、鶏卵、肉類、青果をビジョンフードと位置付け、将来にわたって持続可能な生産、流通、消費の仕組みを作っている。その一つが定期的な利用を申し込む「予約」だ。野菜の予約は2020年、沃土会を含む首都圏の五つの提携生産者が参加し、7地域の生活クラブで配達組合員を対象に始まった。それが今年4月より、全国17の生活クラブに広がっている。

画期的な野菜の予約

予約をすると、毎週または1週おきに、小松菜、人参、トマト、レタスなど4種類の季節の野菜が届く。生活クラブ連合会が共同購入で取り組む「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット(以下、予約野菜セット)」だ。
組合員がライフサイクルに合わせて定期的に消費材を受け取る予約登録は、牛乳、鶏卵、米などは2015年より始めていたが、野菜の予約登録が始まったのは5年後の20年。首都圏の五つの野菜の提携生産者が「関東甲信越ブロック準備会」を組織し、まず7地域の生活クラブと野菜の予約取り組みを始めた。参加した生産者は、茨城県の「丸エビ倶楽部」、千葉県の「さんぶ野菜ネットワーク」、栃木県の「栃木県開拓農業協同組合」、埼玉県の「沃土会」、群馬県の「野菜くらぶ」。いずれも独自の方法で土作りをし、環境に配慮した農法で野菜を作る提携生産者だ。

野菜の予約取り組みが他の食材よりも大きく遅れた理由を、沃土会の丸山幸生さんは次のように説明する。「野菜の生産は気候に左右されることが多く、害虫による被害や災害など予測できない事態が発生し、予定通りの収穫が難しいからです」。さらに、「一つの生産者では規模が小さく無理があり、多くの生産者が協力しなければ不可能でした」

しかし予約登録ができれば、指定された農法の野菜を計画的に作付けでき、農家は経営が安定する。消費者は市場の野菜の価格の高低に影響されずに利用できる。課題は山積みだが、五つの生産者は、野菜の予約取り組みに挑戦した。今年4月より、17の生活クラブに広がり、予約登録者数は1万5860人にのぼる。

沃土会の強瀬眞知子さん。近くの田んぼで米も作るので、ナスの畑にもみ殻を敷く。「農業は一生働くことができる仕事です」

 

「沃土」で育てる


沃土会の丸山幸生さん(右)と矢内源太さん(左)。矢内さんは一日の時間を使ってする仕事として農業を選んだ。3人の子を育てる30歳

予約野菜セットの生産者の一つ、沃土会は、埼玉県北部の深谷市を中心とした生産者グループだ。40人の会員が、年間40品目以上の野菜を栽培する。設立は1981年。農薬や化学肥料を使わず、土作りに力を注いだ。たい肥やなたね油かす、稲わら、もみ殻、落葉などを微生物が分解してできる腐植物を多く含む土だ。これを「沃土」という。

深谷市がある関東平野の北部はほとんど雪が降らず霜柱も立たない温暖な気候だ。日照時間も十分にあり農業に適している。利根川と荒川に挟まれた肥沃(ひよく)な土地でもあるが、70年代の高度経済成長期には農薬や化学肥料を大量に使う農業が営まれていた。

丸山幸生さんは江戸時代より続く農家の5代目。化学物質が自然界に与える影響を考え、農薬などを大量に使う農法に疑問を持ち、沃土会に参加した。有機質の土作りから始め、味の良い、安心して食べられる野菜を作ってきた。「農法を変えるのはとても大変でした。それでも続けられたのは、同じように環境を良くしていきたいと考える仲間がいたからです」と、地域で力を合わせてきたからこそ、今の農法を続けられていると言う。

無駄のない「おまかせ」


沃土会の丸山幸生さん。育てるピーマンの品種は「ちぐさ」。肉厚で大きく育つ
 
生活クラブで取り組む野菜には、農薬や化学肥料の使用について独自の基準がある。その中でも厳しい基準で栽培される野菜が「あっぱれ育ち野菜」と「はればれ育ち野菜」だ。沃土会は、ほとんどの野菜をこの農法で生産する。はればれ育ち野菜は、栽培期間中使用する農薬と化学肥料はそれぞれの地域の使用基準の半分以下を基本とし、できる限り減らして育てる野菜。あっぱれ育ち野菜は栽培期間中、これらを使わないで育てる。このような農法は手間がかかり大量生産には向いていない。

通常の共同購入では、収穫量が少なかったり、収穫時期が取り組み予定週とずれてしまった時は出荷が難しい。このような場合でも、あっぱれはればれ育ち野菜として出荷できるよう、予約野菜セットは生産者が野菜を選ぶ「おまかせ」にした。たとえば、あっぱれ育ち小松菜を予定していたが、出荷するにはまだ早いので次回に回すことにし、ちょうどよく育ったあっぱれ育ちほうれん草をセットにする。生産者は出荷の時季に畑で一番よく育ち自信を持って提供したい野菜を選ぶことができる。

「おまかせは、今までできなかったことを可能にしました。新たな品種や栽培方法に取り組む時は出荷量が不安定になりますが、おまかせなら挑戦できますよ」と丸山さん。「沃土会だけではなく、他の四つの産地もほとんどがこの農法で栽培します。おまかせは、作った野菜を無駄なく出荷できる仕組みです」

約束が産地を変える

5産地が1年間に栽培する予約野菜セットの品目は、42品目にのぼる。1週間に最大25品目の中から組み合わせ、約9000セットを用意する。

沃土会では、割り当てられた野菜を会員が協力し合い、生育状況を確認しながらそれぞれの都合も調整し、声をかけ合って欠品を出さないように出荷する。それでも用意できない時は他の産地に応援を要請することもある。

昨年6月、群馬県南部から埼玉県北部にかけて雹(ひょう)が降り、ハウスに穴が開き、トウモロコシ、ピーマン、ナスなど夏野菜が大きな被害を受けた。この時、他の4産地から応援があり、欠品を出さずに納品ができた。「五つの産地は定期的に集まり出荷の調整や情報交換をしています。災害時にも連携することができ、とても心強いですよ」と、丸山さん。

日本の食料自給率は38%。農林水産省の統計によると、22年の基幹的農業従事者の数は日本全体で約123万人。日本の人口の1%にも満たず、年々減っていく傾向だ。また、耕地面積は約432万5千ヘクタール。そのうち有機JASの認証を受けた圃(ほ)場はわずか0.27%だ。

あっぱれはればれ野菜の生産者は、土作りから始めて、環境に負担がかからない農法をさまざまに工夫する。有機JASの認証を受けた人も大勢いる。丸山さんは、このような農法の野菜を作る農家は、食べる人がいれば増えていくと言う。「今後、予約野菜セットの目標数を安定的に出荷できるようになったら、参加生産者を全国に広げたいです」

組合員が食べる約束をし、産地が責任をもって作り応える予約の仕組みが大きく広がっていく。
6月初めにナスの花が咲く
 
トウモロコシの品種は「ドルチェドリーム」。一粒でも虫食いがあると出荷できないので気を使う
 
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子

「作る」と「食べる」


6月初めのネギ畑。秋までに3回土を寄せながら白い部分を延ばしていく。除草剤を使わないので、草取りの後の足跡が残る

予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セットが届くようになり、3年が過ぎた。毎週4種類の季節の野菜に産地の様子や生産者のメッセージ、レシピが書き込まれたカードが添えられている。

あっぱれ育ち野菜は、最初は6種類に限られていたが、生産者が自ら自慢の野菜を選ぶ「おまかせ」の仕組みが有効に取り入れられ、品目数はどんどん増えていった。「欲しいもの」ではなく「畑でできたもの」を食べることをコンセプトに始まった予約野菜セットだ。旬の季節には同じ野菜が続けてセットされていることがある。それでも作る人によって少しずつ姿形が違いうれしいものだ。

予約野菜セットの取り組みが始まった2020年4月は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、緊急事態宣言が出されていた。「ここ2年ほど、組合員の皆さんと直接会って、自分たちの想(おも)いや予約野菜セットの意義を十分に伝える場をあまりつくれませんでした」と、産地の一つ、埼玉県にある沃土(よくど)会の丸山幸生さん。それを残念に思うとともに、多様な生活様式に対応し、多くの組合員が無理なく利用できるような野菜の届け方を工夫していきたいと考える。「家族構成や家の造りが変わり、ライフスタイルが以前とはちがってきています。忙しい生活の中で料理にかける時間を短くしたり簡素化したりなど、食のとり方もさまざまです」

沃土会では、農業に就き子どもを育てる若い生産者が増えた。「野菜の予約は生産者にとっては大きな励みになります。次の世代を担う彼らにヒントをもらいながら、組合員の皆さんとお互いにできることを探していきたいです」と丸山さん。そうして自分たちが作ってきた野菜を生産する環境を伝えていきたいと言う。

沃土会がある深谷市からは、長野県の浅間山、群馬県の赤城山、さらには新潟県との県境の谷川岳が望める。冬に山々に雪が降り、真っ白にきれいに見える時は風が吹かず、穏やかな一日を過ごすことができる。谷川岳を雲が覆い始めると、一日中強い西風が吹く。近くの熊谷市は毎年猛暑日で話題になる。気温が40度近くになる日もあるが、少しでも風が吹くと暑さが和らぐそうだ。

「野菜作りはその土地の気候を肌で感じながら行うものです。長い間の経験を生かすことができます」。丸山さんは、それぞれの産地も同じだと言う。私たちの暮らしにも役立つはずだ。

定期的に手元に届く予約野菜セット。夏は、定番の小松菜やレタス類に加え、ナス、オクラ、モロヘイヤ、筒菜などの品目が加わる。添えられたメッセージを読み、メニューをあれこれ考えながら、作る人たちの農業への想いを受け止めることができる。
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子
 
『生活と自治』2023年8月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2023年8月20日掲載】
 

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