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社会に必要な仕事を自分たちの手で。 生活クラブワーカーズ運動の成果と課題

【寄稿】一般社団法人「市民セクター政策機構」理事長 加藤好一さん

誰かに雇われるのではなく、みんなが経営者となり地域に必要な仕事をつくりだすのが「ワーカーズ・コレクティブ」という事業体だ。各地の生活クラブ生協を母体に始まってから38年が経過する。昨年末の国会で、ようやくこれらを法的に保障する「労働者協同組合法」が成立した。その意味や背景について、これまでのワーカーズ運動を振り返り、一般社団法人「市民セクター政策機構」の理事長、加藤好一さんに寄稿いただいた。

働く人が主人公、労協法

共同でくらしサポート事業を行う、神奈川県の企業組合「ワーカーズ・コレクティブ・キャリー」と「ワーカーズ・コレクティブはっぴいさん」(写真提供 ワーカーズ・コレクティブ企画編集・のもの)

待望久しかった「労働者協同組合法」(労協法)が、昨年の臨時国会で全会派賛成という画期的な形で、可決成立した。

労働者協同組合(労協)は、世界での歴史は古いが、日本ではなじみが薄い。必要な資金はみんなで出し合い、経営、労働にも平等に参加する「協同労働」の理念を掲げる協同組合だ。日本で労協という存在が強く意識されたのは1980年のことだ。この年にカナダの教育学者で住宅街生協の理事長、アレクサンダー・レイドロー博士が国際協同組合同盟(ICA)の場で、世界の協同組合関係者に、労協の多彩な登場の意義を問題提起したからだ。

今回成立した法案第1条に立法の目的が記されている。労協が他の協同組合やNPO法人と本質的に異なる点として、①組合員による出資(出資原理)②組合員の意思を反映した事業の運営(意見反映原理)③組合員自らがその事業に従事する(従事原理)。この三つの基本原理が強調された。

生活クラブ愛知の組合員で、自身もワーカーズ運動に携わっている「ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(WNJ)」の代表、藤井恵里さんは、この基本原理を目にし、「鳥肌が立ちました」とコメントしているが、さもありなん。こうした法律が日本になかったために、彼女たちはNPO法人や企業組合、法人格なき任意団体などの形態をやむなく採用しつつ、苦労を重ねてきたからだ。

立法の目的に加え今回の法案にはいくつかの特徴がある。一つは設立が容易なことだ。原則5人以上で設立が可能で、かつその手続きも簡便だ。
また日本の従来の協同組合法制にある事業の制限がおおむねないことも特徴だ。これは今後の労協の可能性という意味で注目できる。日本の既存の協同組合も健闘していて、現在、日本の全世帯の37%が生協を利用し、農林漁業生産額の半分は協同組合により供給されている。また、人口の4人に1人が協同組合共済に加入していて、約6500万人が何らかの協同組合に加入している。

しかし労協法の成立で今後さらに地域で協同の厚みを増す可能性が見通せる。レイドロー博士は「鉄道事業以外で、世界のどこの協同組合もやってないというような経済事業を思いうかべるのはむずかしい」と豪語したが、日本でも協同組合の影響力をより強めることが可能になる。もちろん事業規模が大きければよいというものではなく、むしろ小さな事業をいかにサポートできるかが重要だ。今後はますますそうだろう。

葛藤や不満を越えて

生活クラブ運動に端を発するワーカーズ運動は、82年に生活クラブ神奈川がデポーという小型店舗事業を地域で展開する際に、その運営を生協がワーカーズに業務委託する形でまず設立された。この時は企業組合をめざしたが認可されなかった。

このころのワーカーズ運動は、こうしたデポーの運営と、これに併設された諸施設でのワーカーズによる事業と運動が主で、食関連の業種が多かった。レストラン、仕出し・総菜、パンの製造・販売などだ。なかには結婚相談所などもあったが、おおむねこういう傾向であった。

その事業は順風満帆に進展したわけではない。一つには「雇用労働ではなく経営者でもあるような働き方」への理解だ。言ってはみるものの、これを理解するのはむずかしい。しかしこの理解が浅ければ「協同労働」の実現はきびしい。二つ目は、「協同労働」は互いの事情を認め合いつつ、先にみた労協法の立法の目的を追求するものだが、時に葛藤や不満も生じ、仲間が脱退するということもある。

これらは法ができたから解決するわけではない。それでも一人一人が尊重し合い、働きがいや地域に貢献する仕事づくりを目指し、ワーカーズ運動はこの38年間で各地に広がった。現在、WNJには340の団体が所属し、そこに働く人は7000人を超える。

持続可能な地域社会へ

日本の労協運動には二系列あり、一つが生活クラブ生協の活動から発展したワーカーズ・コレクティブ、もう一つが戦後の失業対策事業を源流とする日本労働者協同組合連合会系のワーカーズコープだ。

社会学者の上野千鶴子先生は、市民セクター政策機構発行の季刊「社会運動」2014年9月号に「介護保険以降のワーカーズ・コレクティブ」を寄稿している。この中で上野先生は、生活クラブのワーカーズ運動は、2000年の介護保険制度の導入に前後する時期から、事業の主力が福祉関連にシフトしたと指摘する。訪問系の介護職は、育児・介護といった女性の経験を生かすことのできる職種で、ワーカーズを主体とする生活クラブの福祉事業は、この訪問系(並びに通所系)の介護を中心に伸長してきた。ちなみに、18年度末の生活クラブグループの福祉関連の事業所数は859カ所、働くメンバーは1万5855人、全体の事業高合計は180億6977万円に上り、ここ数年は保育・子育て支援の事業が伸長している。

ワーカーズ・コレクティブは既婚女性中心の生協活動から生まれ、ワーカーズコープは失業した男性の雇用を守る労働組合運動から生まれた。その経過から、両者の間には家計の経済格差の問題なども存在し、理念のうえでも担い手のうえでも水と油だった。しかしこの両者が接近してきたというのが上野先生の評価だ。

この評価は6年前のものだ。その後も両者は議論を重ね、労協法という協同の成果物を形にするまでになった。この努力に敬意を表したい。この背景には新自由主義の厳しい諸改革がもたらした中産階級の崩壊と格差の拡大という、社会の変容も絡んでいると上野先生は指摘している。

田嶋康利・日本労協連専務理事は、今後の重要な課題として、労協法の究極目的としての「持続可能で活力ある地域社会の実現」を強調する。生協や農協など既にある協同組合同士、あるいは地域の小規模事業者などとも連携しながら、地域をフィールドに、何が可能かという議論になっていくだろう。国や自治体による「公助」的な仕組みを充実させる必要もある。労協法の成立を、その起爆剤としたい。
栃木県に初めてできた、NPO法人「ワーカーズ・コレクティブたすけあい大地」は、共生型居場所事業「みんなの居場所カフェ・あおぞら」を運営する(撮影 永野佳世)
東京都のNPO法人「コンチェルティーノ」は、障害のある人もない人も対等に、共に働く社会的事業所を運営するワーカーズ・コレクティブ(撮影 諸星美保)

 
かとう・こういち 1957年群馬県生まれ。2006年6月~2020年6月まで生活クラブ連合会会長を務める。共著に「地域の再生4 食料主権のグランドデザイン」(農山漁村文化協会)など。

撮影:魚本勝之
 
★『生活と自治』2021年1月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2021年1月30日掲載】

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