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生産、加工、販売 多様な人々の「働く」で地域経済を回す

食(Food)、環境(Energy)、福祉(Care)に働く(Work)を加えたFEC*+Wの共生圏づくりを目指す各地の生活クラブ。千葉の生活クラブでは、生活協同組合「生活クラブ虹の街」と社会福祉法人「生活クラブ風の村」を立ち上げ、風の村に福祉事業を移管する政策をとってきた。「虹」と「風」の連携は農地をフィールドにした新たな分野でも始まっている。

一人一人の働き方で

「生活クラブ風の村・とんぼ舎さくら」所長の小笹山徹也さん
住宅都市として開発が進む千葉県佐倉市。京成臼井駅から15分ほど歩くと、「直売所」の看板の奥に明るい外壁の建物が見えてくる。「生活クラブ風の村・とんぼ舎さくら」、18歳以上の障害者の就労継続支援事業A型と生活介護事業を行う福祉事業所だ。就労支援の中でも雇用契約を結んで働く人を支援するのがA型、ここでは、漬物工場と菓子工房に直売所を併設し、直営農場の運営や地場野菜の販売を行う。重度の障害を持つ人から経済的な自立を目指して働きたい人まで、目的もできることも違う人たちが通い、農産加工、製菓、農作業、地域活動などに取り組んでいる。

NPO法人「あかとんぼ福祉会」が設立した通所事業所「とんぼ舎」が風の村に編入したのは2007年。当時NPOの職員で現在所長を務める小笹山こささやま徹也さんは、「風の村は利用者の立場で考える法人。これから就労支援がしっかりできるとわくわくしました」と振り返る。以前は親の会中心の運営で、事業展開に苦慮していたと言う。保護者が疲弊しないようレスパイト(休養)も必要だった。
13年には現住所に移転し、漬物の製造を開始した。原料のカットや味付け、計量や品質検査など、すべてここで働くメンバーが手間をかけて作る。漬物は佐倉市の自然になぞらえ「空と風」と名づけられた。事業の立ち上げ時には生活クラブの漬物の提携生産者「浜食」からアドバイスをもらい、漬け汁には同じく「タイヘイ」の醤油しょうゆや「私市醸造」の酢を使うなど、生活クラブとのつながりが事業展開に生かされている。
 
漬物原料のダイコンなど農産加工事業や青果事業で使用する野菜は、とんぼ舎の農場で生産する。農場は、ユニバーサル農業を推進しようという構想の下、16年春に佐倉市内4カ所の農地を借り「風の村ファーム」として始まった。障害のある人や生きづらさを感じる人がどのような作業を担っていくか、実践しながらのモデルづくりだ。
「空と風」と名づけられた漬物類

「虹」と「風」の共同農園

八街農場にて。「虹と風のファーム」農場長の橋口卓弥さん(左)とアドバイザーの田辺樹実さん

風の村ファームは、今春、佐倉市の他、八街市にも農場を広げ、「生活クラブ・虹と風のファーム」として再スタートした。虹の街も新たに運営に参加し、風の村との共同運営となった。専従者は風の村職員とユニバーサル就労の2人。そこにとんぼ舎の農園メンバーとボランティア登録をした虹の街の組合員が加わり、加工原料や生食用の青果物を生産する。風の村ファームを始めた3年前から、「食べることで社会問題を解決しようというなら、見守るだけでなく担い手になろう」と「虹」と「風」で協議を重ね、実現した。

「八街で作るなら、まずは落花生かなと」。炎天下の農場でそう話すのは風の村常勤顧問の田辺樹実たつみさん。アドバイザーとしてファームをサポートする。明治期、県は殖産興業の一環として銚子産のイワシを漬ける油をとるため落花生の生産を奨励した。生活クラブの提携生産者を通じて千葉県在来種の落花生のタネを譲り受けていた田辺さんは、隣接農家の協力を得てタネを増やすところから始めたと言う。香り高い油を豊富に含んだその落花生は、専門機関で調査しても品種名はわからず、「姫落花ひめらっか」と呼び名を付け、風の村が商標登録した。

一般には福祉を目的に「手段としての農業」に取り組むという考え方もある。しかし、虹と風のファームでは、農業にユニバーサルな人たちが参加する形を実現したいとする。「それには、しっかり事業として成立させることが必要です」と話すのは農場長の橋口卓弥さん。少量多品種の野菜生産は手間の割に収益にならない。今後は、タマネギ、ニンジン、ジャガイモなどに品目を絞り収益を上げる計画だ。「このファームを拠点にして農地を増やしていけば、もっとたくさんの人の働く場が作れます」と意気込む。

ファームがつむぐ物語

障害の有無にかかわらず、得意なこと、不得意なことは人によってさまざまだ。とんぼ舎は丁寧に話し合いをしたうえで、メンバーそれぞれができること、得意なことで力を発揮し、総合力での事業自立を目指している。
「漬物の計量、品質検査、いろいろな仕事ができるようになってきたけど、大変なんですよ」と話すのは農産加工部のメンバー、入江美帆さん。最近就労時間を増やし、社会保険にも加入した。一番大変な仕事は、漬物の袋の拭き上げとラベル貼りだと言う。一度拭いても水滴が付くとラベルがうまく貼れず二度拭きすることになる。イレギュラーな仕事にも落ち着いて対応できるよう、メンバー全員ステップアップを図っている。

この日、メンバーは漬物の計量を終え、ジャガイモの皮むきに専念していた。皮むきはタイヘイからの受託事業。日々の大きな変動がなく集中して取り組める分、忍耐力が必要な作業だ。将来、生活クラブの「ビオサポ食材セット」のカット野菜をとんぼ舎が受注し、その材料となる野菜を虹と風のファームで生産する日が来るかもしれない。

他にもファームを生かした新規品を開発している。その一つ、イワシのオイルサーディンは、虹の街の組合員も試食に参加した風の村のオリジナル品。漬け油の一部に姫落花を搾油し使用する。製造は外部に委託し、とんぼ舎のメンバーが包装を担っている。

千葉県で水揚げされたイワシをファームの姫落花で漬けるオイルサーディン。明治期に起こった地場産業の物語は、多様な人々の手で新しい展開を見せている。
手早くジャガイモの皮をむく入江美帆さん
*F:食料、E:エネルギー、C:ケアの略。内橋克人氏(評論家、旧2012国際協同組合年全国実行委員会・委員長)が提唱。
イラスト/永野佳世   文/本紙・元木知子


『生活と自治』2019年10月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。

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