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ラ・フランスが選んだ大江町で JAさがえ西村山【ラ・フランス、紅玉ほか】


西洋ナシのひとつ、ラ・フランスの生産量は、山形県が全国の約80%を占める。なかでもJAさがえ西村山西洋梨部会大江支部は、芳醇ほうじゅんで豊かな味わいのラ・フランスを生産する先駆的存在だ。

最初は「受粉樹」

ラ・フランスは、独特の香りとなめらかな食感を持つ西洋ナシの一種だ。黒海とカスピ海にはさまれたコーカサス地方が原産地といわれている。ギリシャを経由してフランスに渡った品種が改良され、そこでラ・フランスと名付けられた。

日本で西洋ナシが栽培されるようになったのは、明治の初期。米国やフランスからさまざまな品種の苗木が導入されてからだ。苗木は全国各地に配られ、それぞれの気候風土に合ったものが定着していった。山形県では1887年頃から、主にバートレット、フレミッシュ・ビューティといった品種が栽培された。

昭和に入り、缶詰加工用の原料としてバートレットの需要が伸びる。その頃の西洋ナシは生食用ではなく、ほとんどが缶詰の原料となっていた。バートレットは単独では受粉しにくく、他の品種を近くに植える必要がある。開花期が1週間ほど早いラ・フランスは、その受粉を効率よくすすめるための「受粉樹」として細々と植えられていたにすぎない。

ある時、収穫後そのままにしておいたラ・フランスがいい香りを放っていたので食べてみたところ、とてもおいしいことがわかった。形が悪く、見た目がゴツゴツして不格好なため、山形弁で「見たくない」という意味の「みだくなし」と呼ばれていたが、その後、食味の良さが知れわたり、生食用として栽培されるようになる。

山形県は、開花期に雨が少ないなど、気候がラ・フランスの生育に合っているため、生産量が全国のほぼ80%を占める。特に大江町は、朝日連峰や月山を望む内陸部で朝晩の温度差が大きく、夏は高温多湿で冬は寒冷であることから、国内有数のラ・フランスの生産地となっている。
大江町は、山形県のほぼ中央に位置する。中心部の左沢(あてらざわ)を最上川が流れ、江戸時代から酒田と米沢を結ぶ舟運の中継地として栄えた。酒田港に立ち寄る北前船が運ぶ、上方の食や文化が伝えられている

自前の苗木とともに30年

大江町の山あいにひろがるリンゴやラ・フランスの果物畑

リンゴ農家だった堀実さんは、1970年代にラ・フランスの生産に方向転換した。「リンゴは色付けをしなくてはならないので、葉っぱを取ったり玉を回したり手間がかかります。ラ・フランスは下草刈りをして、必要なだけの消毒をすればよく、手作業での着色管理がいりません」。JAさがえ西村山西洋梨部会の部会長を務めた経験もあり、現在は、55アールの圃場ほじょうに270本近くを栽培する。

JAさがえ西村山は、2000年、寒河江市、大江町、朝日町、西川町、河北町の1市4町がある寒河江西村山地域の農協が合併して設立された。
堀さんは、合併する前の大江町農協時代から、大江梨部会の部会員だ。その頃は、ラ・フランスの苗木は苗木商から購入するのが通常だった。だが、根がはらず胴枯れ病が発生するものもあり、実った果実にはばらつきもみられ、生産者も圃場も増えることがなかった。

そこで、大江町は梨部会にラ・フランスの苗木を自前で作ることを提案し、町の特産品開発事業として位置付け助成金も交付した。堀さんたち梨部会は、1988年より、山に自生している「ヤマナシ」の種子を取り、まいて台木だいぎを育て、それまで栽培していたラ・フランスの枝を接ぎ木した。3年間で7500本余りの苗木を作り、部会の会員に安く配ったところ、ラ・フランスを栽培する農家はどんどん増え、07年には130人、生産量は900トンに上った。


梨部会は苗木を自分たちで作っただけではなく、三陸よりカキがら(牡蠣の殻)とカニがら(蟹の殻)を取り寄せ、畑にまいた。

「各農家の土壌が粘土、黒土、砂地と、それぞれ違います。果実の食味を良くしたり糖度を上げて味をそろえるための取り組みです。大江支部では今でも続けています」と、堀さんは胸を張る。
ラ・フランスを栽培して40年の堀実さんは、JAさがえ西村山西洋梨部会大江支部の一員。「日の光が入るように、風が通るように剪定(せんてい)します」
 

追熟を経て

ラ・フランスは食べごろを見極めるのが難しいといわれているが、収穫時期を判断するのも難しい。そこで、時季になると果肉のでんぷんが、果糖やショ糖に分解し減少することを利用して、ヨード反応による判定を行っている。

サンプルを輪切りにし、断面にヨード液を塗り、色のつき具合をみる。でんぷんの分解がすすむほど、紫色がまばらになり、それを5段階に分け、収穫の指標にする。

また、リンゴやミカン、ブドウなどは、から実を取ると、すぐに食べることができるが、ラ・フランスは、収穫直後は硬くて味も香りもない。一定期間の追熟が必要だ。その間に、含まれるペクチンが水溶性に変わり滑らかな食感になる。甘くなり、芳醇(ほうじゅん)な香りも出てくる。

そのまま放置すると熟成はすすむが、収穫時期の違いや樹になっている時の状態により、熟成度合に差が出る。そのため、追熟をする前に10日間から2週間以上、低温保存をする。「そうすると、冷蔵庫から出した後、いっせいに熟成が始まり、食べごろが均一にそろったものを消費者のみなさんへ届けることが可能です」と、大江営農生活センター営農販売部園芸課の荒木大輔さん。「さらに、追熟中に発生しやすい輪紋病を抑えることもできますよ」。輪紋病にかかると、茶褐色の斑点が円形状にひろがり、軟化腐敗してしまうこともある。

リンゴの産地でもある大江町では、ラ・フランスをリンゴ用の冷蔵庫で予冷していた時代もあったが、部会員が増資をしながら、1996年、300トンの専用冷蔵庫を大江営農生活センターに設置した。

現在、ラ・フランスは収穫後2週間前後、室温1度で冷蔵保管され、その後追熟を経て出荷される。
JAさがえ西村山大江営農生活センター営農販売部園芸課の荒木大輔さん。「今年、ラ・フランスは12日間で収穫しました。熟成を始める時期をそろえるために、冷蔵庫で保管します」と話す

自然の変化と人の知恵と

果物は、1年間丹精をこめて手入れをし、育て収穫を迎える。その間には過度な雨や風、日照など、自然の影響も受ける。

西洋ナシの軸は木質化して堅く、強風にあうと簡単に枝から離れる。20年以上、ラ・フランスをはじめ、数種類の西洋ナシを栽培している後藤喜代志さんは、「シルバーベルやマルゲリット・マリーラなど、大きくて重さもある西洋ナシは、収穫するまでにとても気を使います」。それでも手をかけた分、成果があって面白いと言う。

19年6月には、実をつけたばかりの時期に2回の降雹(こうひょう)があった。雹が当たりくぼみや傷ができたものは傷果として安く出荷される。また、18年、ラ・フランスの収穫期の10月初めに気温が30度に達する日があった。大江営農生活センターの荒木さんは、「実が日焼けしてしまい、出荷が遅かったものの一部は、果肉が褐変してしまいました。気候が変わり、病気や虫の発生の様子が今までとは違っています。温暖化の影響があるのかもしれません」と言う。

西洋ナシは品種によって、その土地との相性がある。たとえば新潟県はル・レクチェ、青森県はゼネラル・レクラーク、岡山県はパス・クラサン。山形県の気候風土が一番合っているといわれるラ・フランスの芳醇な味と香りを、知恵を出し合い伝えていきたい。
後藤喜代志さん。75アールの圃場(ほじょう)でラ・フランスを栽培するほか、数種類の西洋ナシも育てる
6月に降った雹(ひょう)が当たり、できた傷
山形県で開発されたシルバーベル
ラ・フランスの搬入。1年間の努力が実る
撮影/田嶋雅巳    文/本紙・伊澤小枝子

山形生まれの西洋ナシ

日本で栽培されている西洋ナシは、現在20種類ほどある。ほとんどが欧州や米国から導入された。その中でも日本で開発された品種がある。山形県で生まれたシルバーベルとバラードだ。シルバーベルは、山形県農業試験場(現・山形県農業総合研究センター)置賜分場で、ラ・フランスが自然に他品種と交雑してできた種子から苗を育て選抜したもの。「置賜91号」と呼ばれていたが、1979年に県立園芸試験場でシルバーベルとして発表された。

当時置賜分場で仕事をしていたラ・フランス農家の堀実さんは、「缶詰工場から出てくるタネも含めて、いろんなタネを圃場にまいて育てました。それぞれにちがった実がなる木が育ち、その中からシルバーベルが生まれたんですよ」。その時の場長が農学博士の鈴木寅雄さん。鈴木さんの「鈴」にちなんで「シルバーベル」と名付けた。食べごろのクリスマス、大江町は1メートルほどの雪におおわれる銀世界だ。
もうひとつ、山形県立園芸試験場で生まれた西洋ナシの品種がある。99年に品種登録されたバラードだ。ラ・フランスとバートレッドをかけ合わせたもので、ラ・フランスより大きく、収穫時期が早い。

ところで、西洋ナシは熟成すると、独特の香りとなめらかな食感を持つようになるが、食べごろを判断するのが難しいといわれている。特にラ・フランスは他の西洋ナシとちがい、熟成がすすんでも皮の色が変わらないのでなおさらだ。

大江営農生活センターの荒木大輔さんは、「追熟期間は、組合員のみなさんの食感の好みのちがいや、輸送中に傷みが発生することも考えて、少し硬めで届くように設定しています」。市場に出荷するものは、消費者が手に取るまでに時間がかかるので、追熟期間はもう少し短いそうだ。

食べごろは、「軸の周辺部分に触れた時にやわらかい感じがして、ナイフを入れると果汁がポタポタと出るぐらいが一番です」と、おいしさを熟知している生産者の堀実さんが教えてくれた。
撮影/田嶋雅巳
イラスト/堀込和佳
文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2020年1月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。

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