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受け継ぐ「土」は、宝もの 丸エビ倶楽部【青果物ほか】

丸エビ倶楽部Successor-club(サクセサークラブ)のメンバーと、代表取締役社長の海老沢衛さん(前列左から2番目)、事業部長の景山保子さん(前列左)


丸エビ倶楽部には、茨城県茨城町を中心に、生活クラブとの提携を希望する農家が集う。県内各地で有機質肥料を使う土づくりをし、先を見据えた農業を営み、若い世代も育っている。

若き後継者たち

左から、代表の萩谷秀一さん、櫻井友輔さん、木村仁宥さん

今年、22歳の木村仁宥じんゆうさんと1歳年上の櫻井友輔さんは、丸エビ倶楽部くらぶの研修生。直営農場で「たぐいまれ野菜」の黒田五寸人参やサツマイモなどを栽培する。農家出身ではないが農業を学び、丸エビ倶楽部の代表取締役社長、海老沢衛さんの、土づくりを基本にした考え方に共感して就農し、将来は独立を目指している。

丸エビ倶楽部にはこのような若い生産者による組織「Successor-club(サクセサークラブ)」がある。代表の萩谷秀一さんが、「『後継者』という意味で、20代から40代の16人が参加しています」と紹介する。2000年代、日本の農業人口が減少し高齢化が進んでいたころ、海老沢さんは後継者を育てるために、10人ほどで「青年部」をつくった。生活クラブとの出会いを大切にして、長く提携関係を続けていきたいと考えたからだ。今では組織のリーダーを務めるようになったメンバーの子どもたちや、新規就農者が、新たに「Successor-club」と名前を変えて活動している。
それぞれに課題をみつけ、資材や農機具の展示会や堆肥工場に行き情報収集をする。メンバーでもあり、丸エビ倶楽部の取締役専務の海老沢挙人たかひとさんは、「作物の育て方は内部で教えてもらうこともあります。でも、年ごとに気候が違うので、品種を変えたり肥料を工夫するなど、自分たちなりに考えながら作っています」。栽培に関しては、まだまだ毎年1年生だと言う。
海老沢挙人さん(丸エビ倶楽部の取締役専務)

基本は土づくり

丸エビ倶楽部の60人の生産者は、有機質肥料を使い、土壌微生物をかした土づくりをする、栽培期間中の化学合成農薬と化学肥料の使用はできるだけ減らすといった、生活クラブの「あっぱれ育ち」や「はればれ育ち」野菜の基準に沿った農法で栽培する生産者も多い。

70年代、化学肥料を多投し、大規模なハウスでの加温栽培が行われていたころ、海老沢衛さんはその弊害に気づいた。そこで「茨城町有機農法研究会」を結成し、有機肥料を使い、化学肥料や化学合成農薬の使用を極力減らす農法に転換した。「植物が健全に育つように、根っこが十分に働ける環境をつくってあげることが私の仕事だと気づきました」

その後生活クラブと出会い、「食料自給」「食の安全」という理念に共感し、仲間と共に丸エビ倶楽部を設立、20年以上の提携関係が続く。60人の生産者は茨城県内の東西南北に散らばり、気候や土地の状態によって、その時々にできる作物の出荷を補い合う。南部の鉾田市には、4ヘクタールもの大根畑や、ハウス80棟で水菜を栽培する大規模な農家もある。

海老沢さんは、「先人から引き継いだ土地は、農家の一番の財産です。化学肥料を使うと、その時は色や見た目がきれいな野菜ができますが、その後、土の性質が変わり連作障害などが起こりやすくなります。自分だけがその土地で作物を作り、暮らしを成り立たせても、次の世代が使えなくなるような農法では、農業を引き継ぐ人がいなくなってしまいます」。生活していくのに十分な作物を作ることができる土があるからこそ、次の世代が農業に夢を描けると言う。

来年は、4軒の農家が合わせて3.1ヘクタールで加工用トマトの栽培を始める。鉾田市の農家で、取締役副社長の菅谷庄一さんは、加工用トマトを2ヘクタール作付けする予定だ。7月にジャガイモの収穫を終えてから8月のお盆過ぎまでの、作業がない期間を収穫に当てる。初めての試みなので、今年試験的に作ってみた。「実がなるおよその期間もわかり見通しがつきました。来年が楽しみですよ」

加工用トマトは夏の暑い時期に収穫する。高齢化した生産者にとっては大変な作業だ。また、収益が少なく取り扱う業者もなかなか増えない。「そんな中に飛び込んでいくのはえらいと思いましたよ」と海老沢さん。楽しみながら挑戦する姿を頼もしく思い、応援するつもりだ。


加藤木孝嘉さん(Successor-club)

3年前までサラリーマンで、休みの合間に親を手伝っていました。いつの間にか、みんな高齢になり土地を手放しています。耕作を他に委ねるようになると、日常的に手入れができない場合もあり、荒れる場所も増えます。

5年後、10年後の地元の風景を思い浮かべて、改めてネギの産地を作っていきたいと思い就農しました。(水戸市)


小室拓海さん(Successor-club)

消費者との顔が見える関係がおもしろいです。戻って来た生産者カードに「『わが子のように育てた』という気持ちが伝わる小松菜です」と書かれていてうれしかったです。
小室満さん(右)
丸エビ倶楽部で水菜を作っているのは私だけです。農法に合わせるためにいろいろ考えながら10年が過ぎました。80棟あるハウスの水菜は全部あっぱれ、はればれの作り方です。

「よやくらぶ」には期待しています。予約で経営が安定しますし、「食べたい」が数字になって見えれば、やりがいになり、若い世代もついてきます。欠品は出さないつもりですよ。(鉾田市)


「まつかげ農園」中山祐美加さん(左)・大浦かおりさん(右)(Successor-club)

二人とも東京都出身です。中学校の社会の授業で、農業人口の高齢化が問題になっていることを知りました。同じ高校で学び、農業研修を経て農園を設立したのです。7年後、丸エビ倶楽部と出会いました。ここでは非農家であるとか女性であるとか、関係なくいろいろなことが学べます。
あっぱれやはればれ野菜は、ほうっておくと虫がついて見た目が悪くなってしまいます。でも私たちは、安全であるとともに美しい野菜作りを目指しています。(城里町)


久保努さん

父が農業を営んでいましたが、私は農業が大っ嫌いで勤めに出ていましたよ。でも、いつの間にか後を継いでいました。今は30ヘクタールの土地に建つ80棟のハウスで、大根やレタスを栽培しています。

台風15号ではハウスのビニールを半分ぐらいはがされて、大根もキャベツも飛ばされました。竜巻も来たんです。でも、資材が来ればすぐ元に戻ります。仕事の合間に直していきます。(鉾田市)

期待の「よやくらぶ」

20年4月より、首都圏の七つの生活クラブで、野菜の「ビジョンフードよやくらぶ」の先行取り組みが開始される。現在年間予約で取り組んでいる、米、牛乳、鶏卵に続く、「あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」だ。栃木県の「栃木県開拓農業協同組合」、埼玉県の「沃土会」、群馬県の「野菜くらぶ」、千葉県の「さんぶ野菜ネットワーク」、茨城県の「丸エビ倶楽部」の各生産者が参加する。

組合員が野菜セットを1年間予約すると、生産者は計画的に生産することができる。また、気象条件によって作物の生産量が変わり、それに従って上下する市場の価格に左右されず、安定的に供給することも可能だ。事業部長の景山保子さんは、「生産者は、よやくらぶにとても期待しています。食べる側の目標の1万人が1年間の予約をしてくれるなら、本気で応えなければと」

しかし気象災害により、思うように収穫ができない年もある。
「今回のように台風15号、19号が続けて来襲し、その後も大雨にあい壊滅的な被害を受けた時は、ごめんなさいと言うしかありません。農業には毎年何かしらの気象災害がつきものです。それを考慮して、契約数が少なくても2倍以上は作付けします」

また、茨城県は南北に広く、海のそばで温暖な地域もある。「同じ地域に同じ作物を大規模に作るのではなく、県内に分散し、とどこおりなく届ける準備はできています」と頼もしい。

海老沢さんが11年前に「生活クラブとの出会いを大切にしていきたい」とつくった青年部が、これから農業を担う中心になるSuccessor-clubに引き継がれている。東日本大震災後に食料の大切さに目を向けてメンバーに加わった人もいる。食べる人が見えているからこそいいかげんなことはできないし、信頼してもらっているという誇りも抱いている。

あっぱれ、はればれ野菜を育てる「土」が、着々と次の世代に伝えられる。

丸エビ倶楽部の取締役副社長の菅谷庄一さんは、40ヘクタールの圃場(ほじょう)を持つ大規模農家。露地で大根を育て、来年は加工用トマトの栽培に挑戦する

撮影/田嶋雅巳   文/本紙・伊澤小枝子

避けられない自然災害

9月9日朝5時半、台風15号が千葉県千葉市に上陸し、茨城県の東側を北上した。丸エビ倶楽部くらぶでは、南部の海岸沿いの鉾田市と行方市にある生産地を中心に、暴風により大きな被害が発生した。

丸エビ倶楽部の事業部長、景山保子さんは、9日早朝より各生産者の状況確認のために圃場ほじょうの見回りに出た。倒木があり、さまざまなものが飛散し、迂回うかいや渋滞が発生して、思うようにたどり着けない場所もあった。

野菜は暴風のために振り回された状態で、ブロッコリーの茎は曲がり、カブの葉がちぎれ、小松菜も折れたものが多く見られた。また、今後ネギやレタス、ブロッコリーに軟腐病が発生し、広がることが心配される。チンゲン菜を出荷する農家では停電のために機械梱包こんぽうができなく、手詰め作業を行っていた。

3日間で25カ所の農家を訪ね、会った生産者にはいたわりの言葉をかけ、病害虫発生予防や、出荷する際の注意を伝えた。電話での聞き取り調査を合わせた結果、ハウスの全半壊が47棟、ビニール飛散と一部損壊が116棟にのぼることがわかった。
さらに1カ月後の10月12日から13日にかけて台風19号が15号と同じような道筋をたどり、今度は大雨による被害をもたらした。

栃木県と福島県で降った雨を集めた那珂川が水戸市で氾濫し、多くの田畑が冠水した。近くを那珂川が流れる加藤木孝嘉さんの圃場ほじょうでは、20アールが水につかり、8000玉のブロッコリーが出荷できなくなった。また、鉾田市で水菜を栽培している小室満さんは、暴風からハウスパイプを守るためにビニールをはずしておいた。そこに多量の雨が降った。収穫をあきらめ、10棟分のハウスの、タネのまき直しを決断した。

景山さんは、「自然災害はいつものことさ」と、何事もなかったように集荷場に野菜を運んで来る、何人もの生産者の姿を見ている。「大きな被害を受けながらも、覚悟を持って生産と修復にいそしむ彼らに頼もしさを感じます」と言う。「そして、生産者がなんとか立て直しを図っていけるのは、注文があった野菜を消費者へ届ける責任を全うしようとする思いがあるから」とも。

その後も10月25日には、台風21号により茨城県に再び豪雨がもたらされた。機械も人も入れない「泥化」した圃場は、防除ができず病害の広がりが心配され、作業も容易ではない。それでも前を向く生産者を支えるのは、消費者の姿が確実に見えているという関係性だ。それを忘れないでいたい。


撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2019年12月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。

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