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ミツバチと共にある暮らし スリーエイト【国産はちみつほか】




スリーエイトは長野県北安曇郡の松川村、白馬村、安曇野市などで養蜂を営み、東京都中野区にある工場でミツバチが集めた蜜を製品化する。ろ過するだけで、一切加工を加えない「純粋はちみつ」の提携生産者だ。

ミツバチが作るハチミツ

「ハチミツは、花の種類によって味も香りも違います。国産、外国産を問わず、その国、地域にあるさまざまな花の蜜を味わい楽しめますよ」と、スリーエイトの代表取締役、木村信江さんがハチミツの魅力を語る。

ミツバチが花の蜜を集め、食料として巣に保存したものがハチミツだ。蜜を集める係の働きバチは蜜を体の中にある蜜胃と呼ばれる袋にためて運ぶ。巣に帰ると、蜜を巣房に詰める係の働きバチに口移しで渡す。その間に蜜の主な成分であるショ糖が果糖とブドウ糖に分解され、消化吸収されやすい形になる。巣房に入れられた蜜は、ハチが羽で送る風によって、水分が20%ぐらいまでに濃縮される。

「蜜が十分な濃度になると、巣房にロウで蓋をして保存します。5年も10年も腐敗することはありませんよ」と木村さん。「ハチミツは、体への吸収がとても早くて、食べるとすぐにエネルギーに変わります。カロリーは砂糖よりも2割ぐらい低いですが、甘みは2倍もありますよ。だからちょっと料理に使うだけでコクがでます」

抗菌作用や保湿効果もあり、かぜのひき始めに少し口に入れるだけで、のどの「いがいが」が和らいでくる。「保存がきき、栄養や健康の面からみても、とても優れた食べ物だと思います。ぜひ、台所に常備していただきたいですね」
スリーエイト代表取締役の木村信江さん

蜜採りの1年

スリーエイトの採蜜は4月に咲く桜から始まる。5月はリンゴ農家の畑に巣箱を置き、花粉交配をしながら蜜を集める。リンゴは病害虫が発生するのを防ぐために消毒が行われる。長野県のリンゴ農家は、養蜂家と話し合い、ミツバチをリンゴ畑に放している間は農薬散布を行わないという取り決めをし、実行している。また、7月末に稲作農家がネオニコチノイド系の農薬を田んぼに散布するが、その時もミツバチに影響が及ばないように、飛ぶ前の早朝に行うことが決められている。

5月半ばを過ぎるとアカシアの採蜜が最盛期を迎える。サラリとしてクセがなく、甘みもさっぱりとした人気のあるハチミツだ。ここでいうアカシアは正確には「ニセアカシア」。マメ科の植物で白い花を房のように咲かせる。1870年代に日本にもたらされた外来種の落葉高木だ。成長が早く、まきや木炭の原料にするなど、主に燃料として利用された。現在、長野県や秋田県に広く繁殖する。

その後、クリ、菩提樹ぼだいじゅ(シナノキ)、ソバと、9月まで採蜜が続く。

寒くなる11月の終わりごろ、ハチを暖かい場所で越冬させるために、三重県尾鷲市や東京都町田市に巣箱を移動する。ハチミツの代わりに砂糖水を与えながら春を待つ。
スリーエイト専務取締役の木村眞實さん。二十数年来の養蜂家
「今年は4月末に北安曇郡に霜が降り、アカシアの花芽が落ちてしまいました。マイナス4度になり田んぼには氷が張りましたよ」と、スリーエイトの代表取締役専務の木村眞實さん。「残念ながら、標高の高い白馬村や上高地では花がとても少ない年となりました」

花の数や咲く時期は、毎年同じとは限らない。二十数年来の養蜂家でもある木村さんは、いつも、どうしたらハチがより多く蜜を集められるかと考える。「たとえばアカシアが満開になり、最も蜜をふく時に、元気なハチの数が多く、群れが最高の状態になるように飼育します」長年の経験と勘が必要だと言う。
採蜜を待つ養蜂場
長野県で採蜜したアカシアのハチミツ。採蜜した人、日付、場所などが書かれている

蜜はろ過するだけ

養蜂場で集められたハチミツは一斗缶に詰められ東京都中野区にある工場へ運ばれる。それぞれの缶には、採蜜した場所、日付、採蜜者、重量などを書いたラベルが貼られ、製品化した後もこれをたどれば生産の履歴は明確だ。

原料のハチミツには細かい巣のかけらや巣枠の破片、ハチなどが交じっている。それらを取り除くために、60度以下の湯せんでゆっくり温めて粘度を低くし、目の細かい網です。異物を取り除いた後びんに詰めてふたをし、ラベルを貼って出荷する。「ハチが集めた蜜に何も足さず、何も引かない、ほぼ自然の状態のハチミツですよ」と木村信江さん。「純粋はちみつ」の製造工程はとてもシンプルだ。

花から集めるハチミツは畜産物だ。花の種類やその年の気候、採蜜する場所、時期により、色も香りも粘度も違う。

ジュースなどを大量に生産するには常に一定の質が求められる。そのため大手食品会社では、色や香り、花粉、タンパク質などを取り去る加工を施したハチミツが使われる。「精製はちみつ」と言われる扱いやすいハチミツだ。飲料や製菓の原料に多く使われるが、ハチミツとしての栄養や働きはほとんどなくなる。しかし原料表示はそこまで詳細には記載されず、「はちみつ」のままのものが多い。

厳しい残留農薬検査

ミツバチは家畜だ。飼育するにあたり、行政に、「どこで何群(巣箱1箱で1群)を飼う」、という申請を提出する。法定伝染病も定められていて、罹患りかんすると巣ごと焼却処分をしなければならない。

その一つに腐蛆ふそ病がある。ミツバチの幼虫が細菌に感染して死んでしまう伝染病だ。治療方法がないので抗生物質を使って予防する。ハチの体内を通り作られるハチミツには抗生物質が含まれる可能性がある。検出されると出荷できない。養蜂家がミツバチの健康を保つために抗生物質を使う時は、ハチミツに残留しないように細心の注意を払う。

スリーエイトの提携養蜂家は、養蜂記録を作り入荷時に提出することが義務付けられている。どこで何群飼育しているか、いつどの薬をどれぐらい投与したかなどを記録したものだ。さらにサンプルも提出する。115項目の農薬検査の他に、ネオニコチノイド系農薬、抗生物質の残留検査を行うためのものだ。

その他に放射能検査も行われ、色や香りも点検する。また、全国はちみつ公正取引協議会の「はちみつの組成基準」による、水分、ミネラル、糖類などの検査もある。すべてに適合した原料が消費材のハチミツとなり、組合員の元へ届けられる。

自然を感じる仕事

近年、ミツバチは花の蜜を集めるだけではなく、ハウスの中で野菜や果実を作るための花粉交配にも大いに役立っている。真冬にイチゴやメロンが食べられるのはミツバチによる花粉交配のおかげだ。ナス、キュウリ、トマトが1年中スーパーに並ぶのも同じ。国内養蜂産業の経済効果は、花粉交配用のミツバチの飼育が7千5百億円から1兆円と言われている。一方、蜜を採る養蜂家は全体の3割程度にすぎない。

養蜂家の高齢化が進み、自然環境も変わり年々花も少なくなった。しかし、四季折々の花が咲き蜜源のある環境が守られ、養蜂の技術が伝えられてこそ手にすることができるハチミツだ。
スリーエイト養蜂部の志村学さんは、「ハチが花粉を運んで森を豊かにします。森はたくさんの命を育んで自然の大きな循環を作り出しています。私たちはハチミツをいただきながら、季節に敏感になったり、生き物の近くにいると感じたりと、その循環の中に少しだけ関わらせてもらっています」と、養蜂の仕事を表現する。

ハチが活動する自然環境とそこに生息する生き物を知り、気を配りながら自分たちの暮らしに必要な食べものを作り出す。台所のハチミツは、そんな養蜂家の手により届けられている。
スリーエイト養蜂部の志村学さん。採蜜の季節はほとんど安曇野で暮らす
撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子

熊と知恵比べをしながら

熊に荒らされた巣箱(左写真)、スリーエイトの提携生産者、中山久美恵さん(右写真)

「こんな壊され方をしたのは初めてですよ」と、巣箱の横の壁をはぎ取られているのを見て驚いたのは、養蜂家の中山久美恵さん。熊が夜の間に高圧線の下の土を掘り、養蜂場の中に入って巣箱を壊し、クリの蜜がたっぷり入った巣枠を取り出していった。採蜜時期は、巣箱を布で覆ったり、真ん中に集めたり、電圧を高めたりと、熊との知恵比べが続く。

久美恵さんの父親は移動養蜂師だった。1940年代より、鹿児島県から山口県、山形県、北海道へと、ナタネやレンゲの花前線をミツバチと共に追いかけて蜜を集めていた。久美恵さんは30代の頃から、長野県北安曇郡松川村にある父親の養蜂場で手伝うようになる。養蜂の技術を受け継ぎ、現在はスリーエイトの14人の提携養蜂家の一人としてなくてはならない存在だ。

採蜜は短期間に集中して行うため人手を必要とする。スリーエイトは2008年より、生活クラブの「夢都里路ゆとりろくらぶ」で組合員の援農を募っている。夢都里路くらぶは、組合員が、提携生産者の農作業の手伝いや農業研修に参加するしくみだ。採蜜の時期に巣箱が蜜でいっぱいになると、その重量は40キロ近くにもなる。持ち上げたり運んだりの重労働が続くため、久美恵さんはスリーエイトを通してこのしくみを活用する。「長年通い、仕事に慣れている人もいてとても助かっています」と頼りにする。

養蜂部の志村学さんは、「参加者の組合員のなかには、自分は消費者だが、消費するだけではなく、手伝えることがあれば生産にも関わりたいと考えている人がたくさんいます」。夢都里路くらぶの力を借りて、高齢になった生産者を支えたり、技術をつないだりしていこうと考えている。

安曇野は、穂高岳、槍ヶ岳など3千メートル級の山々が連なる日本アルプスを望み、自然が豊かで田園風景が美しい場所だ。長年住んでいる久美恵さんは、昔に比べて夏にセミが鳴かなくなったと憂える。水田のカメムシや、松を立ち枯れさせるマツクイムシの防除のために散布される農薬のせいではないかと考える。また、河川敷にあるアカシアの並木は、水害対策のため伐採がすすんでいる。熊も時々悪さをしにやって来る。

しかし養蜂場に出現する動物や、安曇野の農家の営みと折り合いをつけながら、これからも養蜂を続けたいと久美恵さんさんは言う。「アカシアの蜜が一番好きですよ。料理の甘みには全部ハチミツを使います。カボチャもお肉も魚も全部ハチミツで煮ます。ちょっとぜいたくかもしれませんけれど、おいしいし体にもいいです」。青梅を、重さの半量のハチミツでコトコトと煮たお茶うけは、甘酸っぱくてやさしい味がした。
 

青梅の蜜煮

 
撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子
 
『生活と自治』2019年10月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。

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