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介護認定「要支援1、2」の人への影響は

介護保険制度を利用するのに必要な介護認定で「要支援1、2」と認定された人が受けられる介護サービスが、今年4月から市町村の事業になった。



今年4月から介護保険制度が一部改正される。そのポイントの一つとして厚生労働省は「地域包括ケアシステムの深化・推進」を掲げ「全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止に向けて取り組む仕組みを制度化する」としている。


地域包括ケアシステムとは、高齢者が地域で自立した生活を営めるように、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する体制づくりとされているが、その「深化」のために、「全市町村が保険者機能を発揮する」とは、いったいどういう意味なのだろうか。


首都圏の介護事業所で働く知人を訪ね、教えを請うと「国や県ではなく、全市町村が主体となって介護事業を進めなさいということ。今後、着実に増大する介護サービス費用を抑制するために、要介護状態になる人を増やさないよう、介護予防事業に力を入れる必要があるとの視点に立った制度改正と聞いています」と説明してくれた。

具体的には要支援1、2の介護認定を受けた人が利用できる「介護予防訪間介護(ホームヘルプ)」や「介護予防通所介護(デイサービス)」が市町村事業に移行され、既存の介護事業所だけでなく、異業種の民間企業やボランテイア団体、NPO法人や生協が、その担い手として同事業に参加できるようになるという。

「地域間格差」が出る恐れも

市町村が主体的に計画を立て、限られた財源を管理しながら、介護予防事業を進めるというが、どこも一律にとはいかないのではなかろうか。この点を先の知人に確認すると「そうです。今後は介護サービスの地域格差が生まれると指摘する人が少なくないのも事実」と険しい表情になった。

だとすれば、介護予防事業を充実させる計画の立案に意欲的で、財源もある市町村で暮らす人は有利だが、それがままならない市町村で暮らす人は不利になる制度見直しという感は否めない。その対策として厚労省は市町村の実績に応じて交付金を上乗せする「インセンティブ(報奨制度)」を用意するというが、いくら実績を積みたくとも、事業計画に見合った財源と事業者が確保できなければ、無い袖は振れないということにならないか。


「その可能性は十分あります。だから、各市町村はなるべくコストをかけずに介護事業者を増やさなければならない。でも、適切な収入がなければ事業は継続していけないし、介護を担う人材の確保もままならない。とても悩ましい問題というしかありません」

新たな介護事業者が確保できなければ、既存の事業所を利用するしかない。その受け入れ体制が整わなければ、介護予防事業を使えないケースが増えるのは当然だろう。「あとは自己責任で何とかなさい」というのだろうか。

こうしたなか、事業存続の危機に直面しているのが各地の特別養護老人ホーム(特養)だ。特養は2015年4月からの制度改正で「機能重点化」がうたわれ、介護認定「要介護3」以上の人しか利用できなくなった。ただし「制度改正時点で既に入所している人」と「市町村の適切な助言に基づけば、要介護1、2の人も入所できる」との例外が認められている。

例外はあるにせよ、要介護1と同2の人が利用できなくなったのだから、事業への影響は免れない。おまけに06年4月からの制度改定で、介護施設を利用する際にかかる居住費・食費は保険対象外の全額自己負担となり、これを理由に特養への入居をあきらめる人が増えたという。では、特養を運営する人たちは、今回の介護保険制度の見直しをどうみているのか。


神奈川県藤沢市の特養「ラポール藤沢」、同県横浜市の特養「ラポール三ツ沢」の運営責任者で、社会福祉法人「いきいき福社会」理事長の小川泰子さんに話を聞いた。小川さんは「制度批判をしているだけでは問題解決はない。だから自分たちが主体になって、地域に参加型の福祉事業を起こそうと、私たち生活クラブ神奈川の組合員は介護保険制度ができる以前から頑張ってきました」としたうえで、こう話す。

「2000年に介護保険ができたとき、今後は国の措置ではなく、利用者が本当に必要とする介護サービスが選べ、逆に不要なサービスは自分の意思でいらないと断れる時代になった、ようやく利用者本位の介護事業が生まれると大変うれしく思っていました。でも、その感激が続いていたのは05年くらいまで。その後は、事業者本位の傾向に傾き、現状は自己責任論を前面に打ち出すような制度になってしまったかのようです」


 社会福祉法人「いきいき福祉会」理事長、小川泰子さん

事業者本位の運用になっていないか

措置には税金で面倒をみてもらつている、国の世話になっているという意識が付いて回り、本人も家族も「助けてほしい」という声が上げにくかった。それが介護保険の導入により、事業者と利用者は対等な契約関係で結ばれ、利用者がサービスを選ぶ主体になった。ところが、「もうかるか、もうからないかという市場原理優先の事業者本位の制度運用になってきているのではないでしょうか」と小川さんは疑間を投げかける。

前回の制度改正で、要介護1、2の介護認定を受けた人は、原則的に特養に入居できなくなった。暮らしに余裕のある人は介護付き有料老人ホームなどに入居することもできるだろうが、その費用が負担できない人は、途方に暮れるしかないのだろうか。

「要介護1、2だから軽度と言い切れるかという問題もあります。そのなかには家族がいない、身寄りがない人もいますし、家族の負担が重くて、とても在宅では対応できない人もいます。制度は常に画一的なものになりがちですが、人間は画一的に生きているわけではありません。ここが最も重要なポイントなのに、人間を制度の枠内に無理やり押し込め、枠からこぼれた人は放置する、もうかることには力を入れるが、そうでないことは措置時代のように施し程度でお茶を濁す事業者が増えている気がしてなりません」

一方、介護保険制度の枠外の支援がどうなっているかといえば、事業者が提供する「保険適用外」のサービスを利用しなければならないのが実情だ。むろん、全額利用者負担で、サービス価格の設定も高価になるという。これら保険適用外の事業を担うには、いうまでもなく多くの人材を抱えなければならず、相応の資金力がなければ担えないという現実もある。

「事業を続けていく難しさは十分理解できます。収益が上がらなければ、人材確保が進まないのも身をもって知っています。でも、介護保険報酬にだけ依拠するような施設運営はしたくないのです。今後も生活クラブの組合員としての視点を忘れず、特養を拠点にした地域福祉をつくっていこうと思っています」と小川さん。重ねてこう訴えた。

「少なくとも今回の制度改正で、介護予防事業の保険者(主体)が市町村になったのは、歓迎できることだと思っています。なぜなら、私たちが本当に必要とする地域福祉の実現を、私たちが暮らしている身近な市町村に直接働きかけられるようになったからです。こうした動きが広がっていくことが、各地域で福祉事業に取り組む生活クラブ運動グループのワーカーズや私たち社会福祉法人への力強い支援になると信じています」  

撮影/魚本勝之  文/本紙・山田衛

『生活と自治』2018年1月号の記事を転載しました。

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