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生協の食材宅配【生活クラブ】
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いいと思えばすぐ行動!コンニャク農家の挑戦


赤城山の麓、群馬県利根郡昭和村にある農業生産法人「グリンリーフ」は、コンニャクや漬物などを通じて、東京都、千葉県、神奈川県にある生活クラブの店舗、デポーと提携し、関連会社である「野菜くらぶ」は生活クラブ連合会に青果物を供給する。地元に次々に関連会社を立ち上げ、生鮮野菜の栽培から加工、販売までを幅広く手掛けるだけでなく、自然エネルギー(再生可能エネルギー)による発電事業も展開、敷地内には従業員の子どもを預かる託児所も設けるなど、その活動は多岐にわたる。

農家から加工販売へ

農業生産法人「グリンリーフ」代表取締役の澤浦彰治さん

「グリンリーフ」の代表取締役、澤浦彰治さんは、農業で安定した収入を得て暮らせるようにするには何が必要か、常に模索を続ける。

澤浦さんの父が、戦後、開拓地となった群馬県昭和村に入植したのは1963年。澤浦さんは、高校卒業後、父とともにコンニャクイモの栽培を中心とする農業に従事するようになった。だが、相場により価格が大きく変動するコンニャクイモの生産では収入は安定せず、90年には大暴落も経験した。

このままでは農家として生き残ることが難しいと考えた澤浦さんは、コンニャクイモを生産して出荷するだけでなく、自らコンニャクに加工して販売することを決意。いまだに困難とされるコンニャクイモの無農薬栽培にもいち早く取り組んだ。

当時は資金不足で設備が整わず、四角い型がなく手で丸めた丸いコンニャクだったが、長方形のものしか流通していなかったことが幸いし、丸い形は珍しがられた。しかも無農薬栽培ということで、その価値は徐々に認められ、需要が増えていった。

倉庫だった工場を、衛生管理が行き届くよう、新しく立て直したのは98年。バブル経済崩壊後の不景気の中での大きな決断だった。

「農家が工場を建設し、自ら栽培した農産物を加工、製品化して販売する」。今でこそ「6次産業化」と言われ奨励されるようになったが、当時はそういう発想をもつ農家は周囲にはなく、まして無農薬栽培などは異端とされたが、2000年には有機JAS認証も取得、本格的に有機栽培に取り組むようになった。


コンニャクの次に始めたのは漬物だ。野菜も減農薬で栽培していたが、規格外のものは市場には出荷できない。とはいえ廃棄するのはもったいない。どうにかしたいという思いから漬物に加工することにした。せっかく減農薬で栽培したのだからと、食品添加物も不使用と決め、生産を開始したが、思いもよらない難しい課題に突き当たった。

「添加物を使った漬物しかない時代に、素材の味そのままの漬物を作るのはたいへんでした」と開発部長の原ミツ江さん。自身も添加物の味に慣れていたので、当時は自分で作っていても物足りなさを感じたという。また、製品として出荷するには均一な味が求められるが、野菜は1年中同じ味ではなく、無添加でそれを実現するのは難しい。これについては、発想を変え、消費者に理解を求めることにした。


こうして出会った消費者グループの一つが、のちに生活クラブ群馬として生活クラブ連合会に参加することになる「わくわく村共同購入会」だ。同会も設立まもなく、人間関係のつながりも含めさまざまな情報を集め、無添加、無農薬の生産者を探しては一人一人訪ね歩いていた時期だった。

「決して安いコンニャクではなかったけれど、農薬や添加物を使わない姿勢に共感」したと、当時を知る組合員の一人はそう振り返る。

2005年に入社した農場長の三宅義幸さん(左上写真) 収穫後のコンニャクイモ(左下写真)コンニャクイモの葉。収穫までには3年かかるがこれは2年目のものなのでまだ背丈が低い(右写真)

自ら評価し販売する仕組みを

生活クラブで扱うコンニャク類

澤浦さんが代表を兼任する「野菜くらぶ」は、生鮮野菜を販売するために、農家自らが出資し運営する農業生産法人だ。

市場では需要と供給の関係で価格が決まるため、大量に出荷される時期には、段ボールー箱の野菜が100円にしかならないこともある。手間をかけ無農薬や減農薬で作っても、市場の評価基準は形がそろっていること。それによりランクづけされ価格も決められる。これでは農家の生活は成り立たない。

農業を、子どもたちに将来継ぎたいと言われるような職業にするにはどうしたらいいのか。まずは自分たちで作ったものは自分たちで評価し、価格を決めることが必要だ。どんな野菜が「いい野菜」なのか、 一般的な評価ではなく自分たちで定義して販売したいと考えた末、澤浦さんは「いい野菜」を有機栽培だと定義して仲間を募り、集まった3人で野菜の販売会社を始めた。

次第に需要が増えてきて、欠品がないようにするために仲間も増やしていった。要求された収量を出荷するにはどのくらい作ればいいか、分担して計画を立てる。自分たちで価格を決めているので、どのくらい経費がかけられるかの計算も成り立ち、農家への支払いも約束できる。取引先にとっても、年間一定の価格で安定して有機栽培の野菜が手に入る。こうして契約栽培、契約販売を基本とするシステムを定着させ、1996年には正式に有限会社野菜くらぶとして発足させた。

野菜くらぶでは、農業未経験者が新規就農するための独立支援プログラムを用意し、人材育成にも力を注ぐ。1~2年の研修を経て「いい野菜」が作れるようになったら、販売先は野菜くらぶが確保する。計画的に出荷できさえすれば農業を継続できる仕組みだ。

同プログラムによる新規就農者の第1号は現在、青森県でレタスを栽培する。レタスの需要は年間を通じて多いが、夏場は昭和村でも栽培が難しい。寒冷地での栽培を計画したが、現在のメンバーが遠方に畑を持つわけにはいかないため、青森での就農を条件に新規就農者を募集したという。その後も、静岡県や岡山県で就農可能な人材を育て、全国に系列農家を広げることで、トマトやレタスの通年出荷を可能にした。

虹のかかる看板(左写真)コゆであがった「玉こんにゃく」(真ん中写真) ンニャクの原料を練る工程(右写真)

エネルギー&託児も自給

2016年、グリンリーフは、関連会社の社員なら誰でも利用できる託児所をオープンした。現在は、0~2歳児を8人ほど預かる。学校が休みのときには、小学生も来てもいい。保育士3人に調理士1人。給食もある。敷地内にあるので保育中に子どもが発熱しても、内線で連絡し、親の仕事の進み具合に合わせて対応することができる。

「若い女性社員の出産ブームの際、早く復帰してほしいけれど、保育料が高かったり、職場と離れていたりと難しい事例が多かった。生活のことを合理的に考えたら保育園が職場にあったらいいだろうと考えました」と澤浦さんは言う。

利用料は無料だ。国からの支援もあるが会社の負担もある。それでも女性の働き手を多く必要とする同社は、託児所がなければ仕事が回らないと人材確保を優先させた。結果、若い人材が集まるようになり、働き手は順調に増えている。所得額は減るが、子どもを預けて東京で働くより可処分所得は増えると、今年は夫婦での入社予定もある。

(写真左)ソーラーパネル (右写真)託児所。まきストーブがあり、おやつに焼き芋を焼くことも

赤城山麓の豊かな生態系とそこではぐくまれる命を農業の基本におく澤浦さんは、エネルギーもできるだけ環境負荷の少ないものを自給したいと考え、敷地内に250キロワットのソーラーパネルを建設、関連会社ビオエナジーを立ち上げ、発電事業も開始した。将来的に自分たちで使うことを考えているが、今は売電してその利益を託児所の建設費や、トラクターの購入費などに充てグループ全体で活用している。

また、同社を通じ、ビニールハウスの加温にも重油の使用をやめ、木質チップによるバイオマスボイラーを導入した。今後は、ボイラーに使用するチップを農産物の残渣などで自給できないかと、試行錯誤を重ねる。無駄なく効率よく、自然を壊さないようにするにはどうしたらいいか、澤浦さんは常に考える。

「考えるのには経費が掛からない。思いついたら行動する」を基本に置くグリンリーフの挑戦は、これからも多様に広がっていく。

撮影/高木あつ子  文/本紙・飯間和子

コンニャクを多彩に楽しもう

希少な有機コンニャク

コンニャクイモの栽培は3年かかる。春に植えて秋に掘り起こし、冬は保管する。これを3回繰り返すことで、ようやく大きく育ってコンニャクの原料となる球茎が収穫できる。毎年植えては掘り返す、手間のかかる作物だ。

コンニャクイモの有機栽培は難しく、それを原料とする、日本の「有機コンニャク」の60%弱はグリンリーフとその仲間の生産によるものだ。土壌消毒剤を使用しないため、輸作をして、緑肥をすきこむなどして畑の中の菌のバランスを整える。畑の状況は毎年変わるので、バランスがうまくいくか、挑戦の繰り返しだ。草取りは年に2~3回おこなう。除草剤を使わないため、80センチほどに生い茂ったコンニャクの根元の草を、膝をついたまま手作業で取る。100~200メートルほどの距離を何往復もする重労働だ。

「お金だけでは続けられないですね」とグリンリーフ営業部の竹内明彦さんは言う。

二種それぞれの味わいで 

コンニャクの製法には、生イモをすってそのまま原料とする方法と、生イモを粉にした「コンニャク粉」を原料とする方法がある。
生イモを使う場合は、皮やでんぷん質なども入り、それがコン二ャク本来の風味と色合いになる。
粉から作ったものは真っ自のコンニャクになるが、 一般には海藻粉末などを混ぜ、黒いコンニャクとして販売される。

生イモコンニャクは、イモを蒸してすり、しばらく寝かし、2回に分けてゆで、あくを抜くなど、時間と手間がかかる。味がない分、おいしさの決め手となるのは、風味のほか歯こたえなどの食感だ。蒸したイモを練るときの空気の入り方や凝固剤の量で、硬さに違いが出る。凝固剤に使用されるのは、ホタテガイの殻の粉末から作られる水酸化カルシウム。生イモコンニャクは、凝固剤が少なめで空気が入り、やわらかい食感となるが、コンニャク粉でつくるものは比較的硬めに仕上がる。

グリンリーフでは単品で生イモコンニャクを作るほか、コンニャク粉を配合したものなど、多種類を生産しているので、それぞれの好みや用途で選べる。

コンニャクでヘルシーに

コンニャクに含まれる、グルコマンナンという繊維質は消化吸収されにくい多糖類で、胃を通過し腸の老廃物を排出する作用がある。
カロリーもなく満腹感があることから、肥満対策にも役立つ。近年は、シラタキを輸入するスペインやイタリアで、パスタの代わりに食べられているそうだ。

手間暇かけてつくられた有機コンニャク、美容と健康にもよい食材だけに、発想豊かにさまざまにアレンジして、食卓に活用してはどうだろうか。

薄くのばされたコンニャク。これを細く切るとシラタキになる
 
シラタキを機械で瞬時に結び、パックに詰める
 
味をつけた生イモのコンニャクと漬物の「糖しぼり大根」。 生イモのコンニャクはやわらかく、すぐに味がしみこむ

  

撮影/高木あつ子 文/本紙・飯間和子

『生活と自治』2018年1月号の記事を転載しました。

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