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2012年05月30日:農業協同組合新聞

安全性の問題などからGM食品を取り扱わないという姿勢を堅持

 
 

 本紙では遺伝子組み換え(GM)バラが商業栽培されたことを機に、GM作物・食品について考えるために、GM作物の栽培の実態や安全性がどのように担保されているのかなどについてできるだけ客観的な視点にたち追求してきた。
 今回は、日本でGM作物・食品の商業栽培・流通が認められて以降、安全性・環境汚染・種子独占支配などの観点から、一貫してこれに反対している生活クラブ生協連合会の前田和記企画課長に、その理由を投稿していただいた。

GM由来原料を一貫して排除

全国に広がるGMOフリーゾーン(遺伝子組み換え作物拒否地域)宣言運動。宣言地域は7万8000ha強で、日本の耕作面積の約1.5%にあたる。写真:千葉県旭市 遺伝子組み換え(以下GM)作物・食品問題に対する生活クラブの対応について紹介する。生活クラブ連合会は、北は北海道から西は兵庫県まで20都道府県にある32の会員生協ならびに生活クラブ共済連(*1)が構成する事業連合で、取組品目の共同開発・共同仕入れを担っている。
 日本でGM作物・食品の商業栽培・流通が解禁されたのが1996年秋。生活クラブ連合会は1997年1月の理事会で、GM作物・食品問題に対する基本的態度として次の2つの対応方針を決定した。

  1. GM作物・食品は取り扱わない。
  2. 取り扱わざるを得ない時は、組合員に情報を公開する。

 この方針を定めた当時、「取り扱わない」とする姿勢は困難であり無謀だとの声が業界の常識だった。
 しかし、生活クラブはこの方針を堅持し、主原料のみならず副原料・微量原料そして飼料に至るまで、GM由来原料を排除し代替原料に切り替える対策を進めてきた。対策の範囲はトウモロコシ、大豆製品のほとんどにおよび、その達成水準は下表のとおりである。

「GM食品いらない」運動で商業栽培を阻止

 また、事業上の対応とともに、GM作物・食品に反対する全国運動に取り組んできた。GMに反対する他の生協や消費者団体・市民団体とともに、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」に集い、運動の一翼を担ってきた。
 この運動は、GM作物・食品に対する否定的な世論を形成し、GM作物・食品の義務表示制度を国に導入させ、解禁から15年余を経過した今日に至るまで、国内におけるGM作物の商業栽培を阻止してきた。
 生活クラブがGM作物・食品に反対する理由は3つある。
 一つは、安全性の問題。次に、環境汚染の問題、および種子の独占的支配の問題である。そして、GM表示制度などの改正が喫緊の課題と考えている。

【安全性の問題】

予防原則に基づいた長期臨床試験などの対応を

 現在、食品としての安全性については、食品安全委員会が開発業者の申請書を書面審査している。申請にあたり、動物を使った長期臨床試験は不要である。世代を超えて長期摂取した場合の影響は、実際に食している人類(特に、多く食している日本人)や家畜が現在進行形で実験台になっていると言える。
 GM推進の関連学会・業界そして行政は、GM作物・食品によって健康被害を起こした実例はなく、安全性審査のあり方は妥当であり有効に機能している証しだと説く。
 しかし、仮に健康に対して何らかの悪影響があったとしても、錯綜する他の様々な疾病要因を排除してGM作物・食品との因果関係を立証することは、それが急性障害でない限り、現実的には不可能だ。
 だからこそ、この未知の食品について、予防原則にもとづいて長期臨床試験を行なうなど、より慎重な対応が必要と考える。
 アーパッド・プシュタイ博士(英国)やイリーナ・エルマコバ博士(ロシア)など、動物を使った長期臨床試験を試みた科学者は少数ながらいる。博士らは、GM作物・食品が健康に悪影響(内臓疾患・免疫不全・生殖障害など)をもたらすという結果を明らかにした。すると、博士のみならず所属する研究機関は、学会・業界から試験方法・発表方法に対する批判と圧力の集中砲火を浴び、いずれも研究継続の断念に追い込まれた。試験結果やそれに対する批判の詳細は紙面に限りがあり割愛するが、いずれもインターネットで日本語の関連記事を検索できるので参照してほしい。

安全・安心は市民が自ら確保する

 GMに関する研究は巨額の資金が必要で、GM推進の行政や業界などにその資金を依存しているため、自ずと推進のための研究に偏る構造となる。中立的な基礎的・臨床的研究は、資金的裏付けが無く稀有だ。博士らがスケープゴートにされた後、ますます困難になっているのが実情だろう。
 学会・業界がなすべきことは、都合の悪い結果を寄ってたかって葬り去ることではないはずだ。試験方法に至らない点があると批判するのであれば、それを補正した再試験を自ら行ない、その安全性を証明してみせることではなかったか。
 しかし、そのような実践は今日まで見受けられない。学会・業界はなぜ頑なに長期臨床試験を避け続け、行政もそのあり方を追認し続けるのだろうか…。
 この構図は、福島第一原発事故で衆目の下に暴かれた、産官学一体となって予防原則・慎重原則をおろそかにしてきた“原子力ムラ”の問題に似ている。私たちは、産官学一体となったもう一つの“ムラ”すなわち“遺伝子組み換えムラ”が資金力にモノを言わせて繰り広げる、お手盛りの安全性の宣伝とそのロジックに、今後も十分注意深く接して、安全と安心を自ら確保しなければならないだろう。

【環境汚染の問題】

国内で自生するGMなたね

 GM作物は、栽培や種子のこぼれ落ちなどによって雑草化する。日本では、雑草化したGMなたねが問題となっている。
 日本のなたね畑はピーク時の昭和30年代には30万ha超も広がっていたが、輸入なたねに席巻され、今やその自給率は限りなく0に近く、栽培面積は1千haに満たない。(ちなみに生活クラブは共同購入で国産なたねの大半を消費し、自給をぎりぎりのところで支えている。)
 なたねは現在、油糧原料や飼料として主にカナダとオーストラリアから輸入されている。いずれもGMなたね栽培国である。日本各地の輸入港に陸揚げされたなたねは、港からトラックで製油工場や飼料工場などに搬出されるが、その途中で路上にこぼれ落ちる。こぼれ落ちたGMなたね種子は発芽し、雑草化して子孫を残し自生地を広げていく。いったん環境へ放出されたGM植物は自ら増殖していくため、回収することは困難である。不可逆的な汚染と言える。
 市民や行政(環境省、農水省)による調査によって、自生するGMなたねがすでに半数近くの府県で発見されている。
 なたねを含めアブラナ科は近縁どうしで種(しゅ)の壁を越えて交雑する能力を有しているため厄介だ。事実、近縁のカラシナやハタザオガラシがGMなたねと交雑したと推定される株(個体)が市民による調査で発見されている。アブラナ科の農作物は多種あり、農作物への意図せぬGM汚染が心配される。

農作物のGM汚染に対応できない国内担保法

 このような輸入GM作物による環境汚染・農作物汚染を防止し、汚染による損害を修復するための国際的な取り決めがある。「カルタヘナ議定書」、および日本が議長国を務め2010年に採択された「名古屋・クアラルンプール補足議定書」がそれだ。
 日本はいずれも批准しているが、それらの国内担保法(「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」)には欠陥がある。欠陥とは、議定書・補足議定書の趣旨と異なり、国内担保法の適用対象が日本固有の野生生物種に限定されているため、農業など生物多様性(生態系サービス)の利用がその対象から外されている点だ。
 そのため、農作物へのGM汚染に対応できない。事実、2011年に発覚した未承認GMパパイヤの国内栽培問題について、国内担保法では対応できなかった。
 議定書・補足議定書の趣旨をふまえて国内担保法を改正し、農業など生物多様性の利用に対してもその対象を広げるべきである。

【種子の独占的支配】

種子会社が海外資本に買収されている韓国

 GM種子の特許は、モンサント社をはじめごく少数の開発企業(多国籍資本)に独占されている。
 農業者は、GM種子の購入契約にあたり、GM種子を自家採取することが禁じられる。GM種子が何らかの理由で畑に混入したため意図せず栽培してしまった農業者が、特許権侵害で開発企業に告訴される、もしくは告訴に至らなくとも特許権侵害の賠償を請求される事例が、米国・カナダなどで数多く発生している。
 最も著名な例は、パーシー・シュマイザー氏がモンサント社に告発され最高裁まで争ったケースだ。紙面に限りがあるので裁判内容の紹介は割愛するが、やはりインターネットで日本語の関連記事を検索できるので参照してほしい。
 日本では、GM作物の商業栽培が数多く承認されているが、GM反対運動によって幸いにも実際の商業栽培は阻止できている。もし仮に日本でも商業栽培が始まった場合には、同様の問題が生じる恐れがある。
 種を支配するものが世界の食料市場を支配する時代に入っている。日本や韓国など食料自給力が低い国は恰好のターゲットである。
 隣の韓国では近年、多くの種子会社が海外の開発企業に相次いで買収されており、日本でも警戒が必要である。

【GM表示制度の改正が課題】

重大な欠陥がある食品表示制度

 「カルタヘナ議定書」・「名古屋・クアラルンプール補足議定書」の国内担保法の改正の必要性について上述したが、法改正についてのもう一つの重要な課題がGM表示制度である。
 国などによるこれまでの調査(※2)で、多くの消費者がGM食品はできれば食べたくないと考えていることは明らかだ。
 GM作物・食品を望まない消費者が、その選択を行なうための最大の自衛手段はGM義務表示制度であるはずだ。にもかかわらず、消費者は、GM由来の食品を、そうとは知らずに食べている。現在の表示制度に重大な欠陥があり、消費者の誤認を招いているためだ。
 重大な欠陥とは、義務対象品目とそのほかの品目で、「表示なし」の意味が逆である点だ。義務対象品目では、「表示なし」は遺伝子組み換え由来ではないことを意味する。一方、そのほかの品目では、遺伝子組み換えまたは遺伝子組み換え不分別由来の可能性を意味する。(下表2の赤矢印を参照。)

 ほとんどの品目にGM表示がない市場において、GM食品を食べたくないと考えている消費者が、その意思にもとづいて正しく選択して購入するためには、8作物・32食品群の義務対象品目(2012年4月現在)を暗記しておく必要がある。
 現実的に、それは不可能といえる。そして今後、さらに義務対象品目が増えれば、さらに暗記は困難になるというジレンマを制度的に抱えている。

すべての品目を義務表示に

 この欠陥は、EUのようにすべての品目を義務表示の対象とすることによって解決できる。
 すなわち、遺伝子組み換え由来は「遺伝子組換え」と表示し、由来でないものは表示なしとするシンプルな表示制度に改正し、原料のトレーサビリティの仕組みによってその運用を担保すべきである。
 現在のGM表示制度は、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)および食品衛生法で定められている。消費者庁は「食品表示一元化検討会」を設置して両法を含め食品表示関連法の一元化を検討しているが、この機会にGM表示制度の改正についても検討の俎上に載せるべきである。
 同検討会がこの3月に実施したパブリックコメントに対しても、GM表示制度の改正を求める声が数多く寄せられている。

*1:生活クラブ共済事業連合生活協同組合連合会
※2:食品安全委員会/食品安全モニター課題報告「食品の安全性に関する意識等について」(平成21年7月実施)結果ほか。

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